※さすがに父の日のネタはもうない笑い泣き
でも、なんか書きたくって…中学生の設定で無理矢理タラー中学3年?たぶん、そんな感じ(笑)



                    『phone box』



日曜日の夕暮れ

「バイバーイ、またね」

仲良しのクラスメイトと映画を見た帰り道

「やだ、さっきまで晴れてたのに…」

ひとりになった直後に、前が見えないほどのひどい雨が降り出して

「傘、持ってくれば良かったなぁ」

近くにあった公園の電話ボックスで雨宿りをしながら、迎えに来てくれるというお父さんを待っていると

「えっ!?」

突然ドンドンと扉を叩かれ、心臓が止まりそうなくらい驚いて

「家出でもしたのか?」 

外に出てみると大好きな彼が、ジャージ姿で傘をさして立っていた

「ど、どうしたの?」

「それはこっちのセリフだ、俺はジムの帰り」

「そっか、ちゃんと傘持ってるなんて偉いね」

「梅雨時に傘も持たずに出かける馬鹿に褒められても嬉しくねぇけど…送ってやろうか?」

彼は大きな傘を上下に揺らし、照れくさそうにそっぽをむいてつぶやいた

えっと、夢じゃないよね?

そう思わずにはいられないくらい

すっごく嬉しい

嬉しいんだけど

「ありがとう、でもお父さんが迎えに来てくれるから…」

わたしがそう言って断ると、なぜか彼は顔をしかめてため息をついた

「父の日に親父さんをこき使うなよ」

えっ?

「今日って父の日、だったっけ?」

どうしよう、すっかり忘れてた

「ったく、少しは親孝行しろよ。ほらっ、来たみたいだぞ」

少し弱くなった雨の中、お父さんらしき人影がこっちに向かって近づいて来たのがわかった途端

「じゃあ、またな…」

彼はわたしに背を向け足早に去って行ってしまった

いったい、なんだったんだろ?


とりあえず

「遅くなって悪かったね」

「ううん、来てくれてありがとう」

お父さんから受け取った傘を広げて歩き出したのはいいんだけど

「一緒に映画を見た友達って、彼だったのかい?」

後ろをチラッと振り返りながら、そんなことを聞かれてドキリとした

お母さんほどではないけど、お父さんもわたしが人間の男の子に恋をすることに反対なのはわかってるから

「ううん、たまたま通りかかったみたいで…少し話をしてただけ」

「そうか、優しい子なんだね」

笑顔でそんなことを言われてびっくりしてしまった

「どうして?」

「雨で人通りのない暗い場所で、おまえをひとりにしておけなかったんだろう」

あっ、そっか!

わたしは電話ボックスにいたんだから家に連絡して迎えが来るって想像出来たはずなのに、わざわざ声をかけてお父さんが来るまでそばにいてくれたんだ

そして

そんな彼の気持ちに気づいてくれてるなんて

「お父さん、大好き!」

「なんだい、いきなり?」

「あのね、父の日なのを忘れててプレゼント用意してなかったから…いつもありがとう」

感謝の気持ちを伝えたわたしに、お父さんはいつまでも照れ笑いを浮かべていた




fin


※やっぱり中学時代のお話は難しいですねタラー