ちょっとした『母の日あるある』ですタラー




              『weather rain(天気雨)』




「ただいま」

日曜日の昼下がり、子どもたちを公園で遊ばせてから帰宅すると

「おかえりなさい、今日はほんとにお天気がいいわね。」

早々に取り込んだらしい大量の洗濯物をリビングで畳みながら、彼女はまぶしそうに窓の外を見上げて笑った

「少しは片付いたか?」

「うん、昨日までの雨で溜まってた分も全部洗えて助かっちゃった。」

「お疲れさん。」

「ねぇ、ところで子どもたちは?」

こんな時でさえ

「ああ、玄関で…けんかしてる。」

上手く嘘がつけない俺の言葉を、素直に信じてしまうのが彼女だから

「やあねぇ、あの子たちまた兄妹げんかしてるの?わたしは弟とけんかなんかしたことないのになぁ。」

やはり、疑いもせずに苦笑いしている

「そりゃあ、おまえのとこは年が8つも離れてるし…」

彼女も彼女の弟も穏やかで優しい性格だから、仲違いなんかしたことないに違いない

「そうね、あの子たちはあなたに似てるから。」

「悪かったな、けんかっ早くて。」

アイツらが俺に似てるのは否定しないが、8歳と4歳の兄妹なんて普通はあんなもんだろう

「ちょっと、様子を見て来るね。」

やれやれ、と独り言を言いながら彼女が立ち上がった時

「おかあさん!」

子どもたちが両手を後ろに隠してリビングの中に入って来た

「あらっ、もう仲直りしたの?えらいわね。」

「なにそれ?けんかなんかしてないよ。それより、コレ」

ふたりが同時に差し出したのは

「えっ!?待って、今日って…」

1本ずつ綺麗にラッピングされたカーネーションで

「母の日、だろ?ほんとに気づいてなかったのかよ。」

「だって、公園に行くって言ってたじゃない。」

赤とピンク、それぞれ違う色の花を受け取った彼女は泣き笑いのような表情をして順番に小さな体を抱きしめている

「ありがとう、すごく嬉しい。」

…わざわざ言うつもりはなかったが

「金を出したのは俺だけどな。」

小さな声でつぶやいて、ふと窓の外に目をやると

「ん?」

明るい空からキラキラとした雨粒が落ちてきて

「天気雨、か…」

まるで彼女の気持ちを表しているような大空に、七色の橋が架かりはじめた





fin



※なんのひねりもないお話ですみません笑い泣き