『touch 2』





初夢、ね


今にも眠ってしまいそうなほど酔っていたはずなのに、背中に腕を回して抱きついて来た柔らかい体に戸惑いながら
 
ダメだとわかっているのに彼女の考えていることを読んでしまい、何とも言えない気持ちになった

結婚式をすっぽかされる、そんな夢を見させてしまったのは間違いなく俺のせいだろう

「悪かったな」

「えっ?」

「黙っていなくなって」

謝ったのは夢の話ではなくて、過去に何度も傷つけ泣かせたことに対してだったのだが

「もう、読まないでって言ってるじゃない。それに、わたしが勝手に見た夢なんだから気にしないで」

俺の頬に指先を這わせ、優しく微笑んだ彼女の瞳が妖しく揺れた

「でも…ちゃんと来てね、結婚式」

「当たり前だろ、バカ」

どちらからともなく重ねられた唇は、あっという間に熱を帯びて濡れていき

性急にお互いの素肌を暴いて、大胆に触れあう心地良さに酔いしれながら

「ふっ…」

昨夜見ていた夢を、再現しようとしている自分に苦笑いした





いつものように

熱い手のひらで絶え間なく与えられる甘い刺激に身を委ねつつ

そっと目を開けると、彼がこの状況におよそふさわしくない表情で笑っていることに気がついた

わたし、また何か変なことしちゃってる?

「べつに…なんでもねぇよ」

そう言われても、手で口元を押さえて横を向いてしまった彼はやっぱり笑いを噛み殺しているように見えた

「ぜったい嘘、いったいなに?」

「あちこち触ってくるから、くすぐったかっただけだ」

「えっ!?」

もしかして、嫌だったとか?

「…じゃなくて」

彼はわたしの右手を優しく掴むと、自分の唇に押しあてて
 

「!」


今度は少し苦しそうな表情をして、手のひらよりも熱いところに絡めた指先を導いた

「嫌じゃないから…」

「う、うん」

いつもはされないリクエストも、重ねた唇に漏らされる切なげな吐息もただただ愛おしくて
 
普段は見えにくい彼の心に触れているのを実感しながら、夢のように幸せな時間に溺れていった


翌朝


「ねぇ、今朝はどんな夢を見てたの?」

お布団に潜ったまま、彼が目を覚ますのを待って聞いてみても

「…疲れきってて夢なんか見てねぇよ」

昨日とおんなじ返事しか返って来なかったけど

「ほんとに?おかしいなぁ」

「何が言いたいんだよ?」

「さあ、なんでしょう」

わたしの名前を何度も寝言で呼んでいたこと

教えてあげなくても、わかってるよね



fin




※この手のお話は苦手だからやめとこうと何度も自分に言い聞かせたのに、なんでやっちゃうんだろう泣苦手なので筆が進まず、遅くなってすみませんでした。新年早々こんな出来のお話でお恥ずかしい限りですが、今年もよろしくお願いします照れ

ちなみに去年のお正月はこちら↓