『present 3』




「一周回ってバカだろ、おまえ」

「なんで?」

12月も半ばを過ぎた週末の午後

ジムとバイトの合間に会いに行ったのは、彼女…ではなく小学生の弟の方だった

「ほんっとに、そんな物で良かったのか?」

クリスマスに誕生日を迎える彼女の弟に、あらかじめリクエストを聞いて買って来たのは

「うん!この本、すごく読みたかったんだ。ありがとう、お兄ちゃん」

おもちゃやゲームではなく、小難しそうな小説だった

「子供らしくないやつだな」

「子供って…僕、来年は中学生になるんだよ?勉強ももっと頑張らないといけないし、読みたい本だってたくさんあるんだ」

「…へぇ」

こいつの百分の一でも勉強が好きだったら、俺と彼女の成績もいくらかマシだったに違いない


それはともかく


「ちょっと、頼みがあるんだ」

「お姉ちゃんのこと?」

頭の出来が良いやつは察しもいいらしい

「まぁ、な。悪いけど、24日の夜にこれを姉貴に渡しておいてくれないか?」

まわりくどい話はやめて、ラッピングされた箱が入った紙袋を差し出すと

「クリスマスプレゼント?自分で渡せばいいじゃない。まさか、ケンカでもしたの?」

怪訝そうな顔でそう言われてしまったが

「そんなんじゃねぇよ。クリスマスは忙しくて会えそうにないんだ」

「じゃあ、早めに渡せば?僕のプレゼントは10日も前なのに持って来てるじゃない」

「それは…」

小学生に痛いところを突かれ答えに窮していると

「お姉ちゃんへのプレゼントは日にちにこだわりたいってこと?」

さらに鋭い一撃をくらい、反論する気も無くなってしまった

「お兄ちゃんって、見かけによらずロマンチストだよね」

苦笑いしながら紙袋を受け取り、家の中に消えて行った小さな背中を呆然と眺めながら

サンタクロースの人選を間違えたかもしれない、と後悔しても時すでに遅し

たしかに

クリスマスなんてただのイベントなのだから、プレゼントなんか渡さなくても彼女は気にもしないだろうが

常日頃あまり恋人らしいことをしてやっていない、だけでなく

最近は以前にも増してボクシングやバイトに時間を取られ、寂しい思いをさせているのは火を見るより明らかなのだから


クリスマスイブくらいは喜ばせてやりたい


ただの自己満足に過ぎないとわかっていても




continue(次回に続きます)↓