『present 2』




「やっ、そこはダメ…」

「大丈夫だって。」

「ほんとにやめて。」

「ほらっ、おまえの番だぞ。」

食後のケーキも食べ終わったところで

家から持って来た、細長い積み木を交代で積み上げるゲームをし始めたのはいいのだけれど

「あっ!」

何度やっても、積み木の塔を倒しちゃうのはわたしの方で
 
「へったくそだな。」

「…そろそろ、やめよっか?」

やっぱり、2人でやったって面白くないよね

「そうだな、もう遅いし送ってく。」

少し早めのクリスマスパーティーは、わたしのわがままにつきあわせてしまった感が拭い切れず

「疲れてたのに、ごめんなさい。」

今更だけど申し訳ない気持ちになって、帰り支度をしながら謝ると

「えっ…」

突然、彼は部屋の明かりを消して後ろからわたしを抱きしめた

暗闇の中、足元で明滅するツリーの光はさっきよりもずっと幻想的で

「べつにいいよ、楽しかった。」

耳元に落とされた優しい声とともに、胸の奥が痺れるような甘くてせつない感覚をもたらした

「ほんとに?無理しなくていいよ。」

「無理なんかしてねぇよ。」

「良かった。」

温かい腕の中で幸せな気持ちに包まれていると、彼の大きな手が胸元のブローチに触れていることに気がついた

「ありがとう、すごく嬉しかった。」

「なにが?」

「ブローチ…あの時、ちゃんとお礼を言えなかったから。」
 

そう、あれは

1年前のクリスマスの夜
 
わたしを家まで送ってくれた時に渡された、鍵の形をしたブローチは

『いつか、おまえをもらいにいく』

思ってもみなかった言葉と一緒にプレゼントされ、驚きのあまり号泣してしまいお礼をいうことすら出来なかったから

「…なんの話だよ?」

案の定、彼はしらばっくれてるけど

忘れろって言われたって、絶対に忘れてあげないんだから

あっ、忘れるって言えば

「そうだ、弟に誕生日プレゼントをありがとう。お礼を言っておいてって頼まれてたの忘れた。」

もうすぐ誕生日が来るわたしの弟に、本をプレゼントしてくれたって聞いたんだけど

「わざわざ家まで届けてくれたんでしょ?どうして、わたしがいない時に来たの?」

「あぁ、あれは…」

「なあに?」

「いや、たまたまだ。」

なんなんだろう

もしかして男同士の秘密ってやつ?

「そんなんじゃねぇよ、馬鹿。」

なんとなく、気になっちゃうじゃない

「ほんとになんでもないって。」


溶け残った小さな疑問は

ケーキの甘い香りがする口づけで、跡形もなく消されてしまった。




continue(次回に続きます)↓