『haunted house 4』




文化祭も無事に終了して

教室で『お化け屋敷』のセットを片付け始めたわたしは疲れのせいか、うっかり手を滑らせてしまい

「あっ、あれっ?」

頭の上にバランスを崩した机が落ちてきた…はずだったのに

「大丈夫?」

クラスメートの心配そうな声がして目を開けると、机はずいぶん離れた場所に落下していた

「う、うん。大丈夫みたい。」

これって、彼が助けてくれたのかな?


その後は特に何事もなく


「バイバーイ。」

元通りになった教室で友達と別れ、彼と待ち合わせをしていた部室に向かおうとしていたのに

なぜだかそこで、記憶が途切れてしまい

ふわふわとまるで雲の上にいるような心地良い夢の中を彷徨い続けていたわたしは

「んっ…」

懐かしい人の声で名前を呼ばれた気がして目を覚ますと

「えっ!?」

たしか、学校にいたはずなのに

「あの、どうして?」

薄暗いアパートの部屋で、彼に抱きしめられているんだろう

「眠ってたから…」

はいっ?

「おまえが教室で眠り込んでたから連れて帰っただけだ、馬鹿。」

「ご、ごめんなさい。部室に行こうとしてたんだけど、急に意識がなくなったっていうか…」   

自分でも気がつかないうちに眠ってしまったんだとしたら怖すぎるし、きっと心配させちゃったよね

「いや、俺の方こそ…」

きつく抱きしめられているせいで、はっきりとはわからない彼の表情が

「ごめん、守ってやれなくて。」

苦痛に歪んでいるように感じたのは気のせい、なのかな

「どうして、そんなこと言うの?」

困っている時は何を置いても助けに来てくれる彼は、その問いかけには答えずに

「…最近、変わったことはなかったか?」

わたしを抱く腕にさらに力をこめて、耳元で囁くように聞いてきた

「変わったこと?」

「例えば、誰かの気配を感じたとか。」

質問の意図は良くわからなかったけれど

「そうねぇ、しいて言うなら誰かさんが人前でわたしに触ってくれたこと、かな?」

「はあ?」

冗談のつもりだったのに、思ったより動揺した彼の胸に顔を埋めると

「コーヒーの匂いがする…」

「ずっと、喫茶店にいたからな。」

コーヒーの香りがわたしに移るまで、キスから解放してもらえなかった


それから数日後


「ねぇ、『気配』ってなんのことだったの?」

少しだけ引っかかっていた彼の言葉を、お昼休みの中庭で思い出した

「あれは…」

色づいた葉が落ち始めた木々に視線を移し

「なんでもない、忘れてくれ。」

絶対に何か隠している口調でそう言った彼は


あの時


わたしが『あの人』の夢を見ていたことに、たぶん気づいてる、そんな気がした



fin



※なんとなーく、タバコの匂いで彼が誤解する…みたいなお話を書きたくて(ベタですよね〜タラー)タバコ吸ってたキャラなんていたっけ?からの、今月がお誕生日のカルロ様登場✨になりました笑い泣き急に寒くなってきたので、みなさんも体調に気をつけてくださいね照れ にあ