『lonely trip 2』





「じゃあ、またな」

「ありがとう、おやすみなさい」


修学旅行が明後日に迫った秋の夜


「たかが修学旅行だぞ…」

彼女を家まで送り届けた後、ひとりごちて苦笑いする

なぜなら

さっき渡したお守りには『魔力』を使い、密かにある願いを込めていた

「これじゃあ本当に、ただの過保護な父親だな」

そもそも

春先に彼女に聞かれる以前から、修学旅行には行かないと決めていた

時間的にも経済的にもそんな余裕はない、というのがいちばんの理由ではあるが

女の数が圧倒的に多い学校でのイベント事はどうしたって居心地が悪く、朝から晩までそんな中で過ごなければならない旅行など考えただけでも頭が痛くなり

『わたしも、行くのやめようかな』

俺が行かないなら自分も…そう言い出しかねないことは薄々分かってはいたが

中学2年まで学校に通っていなかった上に高校入学後も魔界の騒動に巻き込まれ、なかなか落ち着いた学生生活を送れずにいた彼女には旅先で友達と楽しい時間を過ごして来て欲しかった

「でも、まぁ」

特殊な『お守り』はやり過ぎだった、かもしれない


そうして始まった彼女が手の届く距離にいない1週間は、想像していたよりもずっと長く感じて

言葉には言い表わせない寂しさを紛らわせるため、ボクシングとバイトに没頭する日々を送るしかなく

「やっと、最終日か」

ようやく彼女が修学旅行から戻って来る日の朝を迎え、ほっとして胸を撫で下ろしたものの

帰宅するのは夕方だと言っていたし、会えるのはきっと明日になるだろう

「……」

そばにいてもいなくても、気づけば彼女のことばかり考えている自分に呆れながら、朝食代わりの牛乳を飲み干した





continue(次回に続きます)↓