『propose 10(シンデレラ)』
今夜は彼女を帰さなくていい
それなのに
いつもの癖で時間を確認すると、ちょうど日付が変わるところだった
「…どうしたの?」
攻撃の手が緩んだことで、されるがままになっていた彼女も俺の視線の先に時計があることに気がつき
「誕生日、終わっちゃた」
寂しそうな声でそうつぶやいた
「そうだな」
うっかり相槌を打ってしまったが、ちょっと待て
こっちはまだ終わってないこと、忘れてねぇよな
「続けても、大丈夫か?」
「うん」
「どうしても無理なら…」
長時間、緊張状態にあって疲れているのは分かっている
これから先一緒に過ごす時間はいくらでもあるのだから、今夜はもう遅いしここまでにした方がいいのかもしれない
そんな考えを見透かしたかのように
「ダメ、最後までして。」
上半身を起こすと首に手を回して抱きついてきた
「あんなにびびってたくせに」
「だって…」
「わかってる」
午前零時を過ぎても魔法が解けそうにないシンデレラの手を取り、細い指に光るリングにそっと唇を押しあてると
「素敵な指輪をありがとう」
絡めるようにして繋いだ手を嬉しそうに見つめているが
「どういたしまして」
今はそんな仕草でさえ、尽きることのない欲望を刺激してしまう
「お願い、やめないで」
「ああ…」
彼女の優しさに甘え何度も角度を変えながら口内を貪るように口づけをかわし、自分の熱を狭くて温かい場所へと進めていく
繊細な部分が直に触れ合う感触だけで、神経が焼き切れそうなくらいの快感に苦しんでいるのはたぶん俺だけだろう
反対に
このまま無防備な状態で最後までいってしまえば、彼女が不安を感じる可能性は充分にあった
でも
今夜だけは、何にも隔てられることなくひとつになりたいという欲にどうしても抗えなかった
何度も押し戻されて上手く進めず、ぎこちない動きを繰り返しているうちに
緊張と焦りから額に浮かんだ汗を何度も拭う俺に気づいた彼女は、ふうっと息をはきながら
「大好き…」
涙の浮かんだ瞳を細め、子供のようにあどけない顔で微笑んだ
「バカ」
これは、さすがに反則だ
「だって、好きなんだもん」
すっと、体の力が抜けた彼女の深部に受け入れられたと感じた瞬間
心臓にマグマが流れ込んできたような感覚を覚え、目の奥に真っ赤な火花が散った
意識が飛んでいたのはおそらくそんなに長い時間ではないだろう
ふっ、と我に返ると力を失った汗だくの体は
柔らかい胸の中にしっかりと抱きしめられていた
continue(次回に続きます)↓