『share 4』
プレゼントって、もしかして
「あのっ、それってまさか」
そういうことじゃないよね?
「さぁな、とりあえず時間もないし」
素早く周囲を見渡した彼に抱きしめられた、次の瞬間
「ここ、どこ?」
テレポートして連れて来られたのは
「この辺りのはずなんだが…」
ビルに囲まれた路地裏のような薄暗くて狭い場所で
「とりあえず行こう」
彼に手を引かれて路地裏から通りに出ると
「!」
妖しい光の中に、いかにもって感じのホテルが立ち並んでいて
「あのっ、ちょっと待って⁉︎」
さすがに驚いて立ち止まろうとしたわたしに彼は振り向いて
「心配するな、おまえはじっとしてるだけでいい」
そう言って強引にわたしの腕を掴むとどんどん先へと進んで行く
もうどうにでもなれ、と覚悟を決めた時
「兄ちゃん!来てくれたのか」
ブロック塀に立て掛けられた年季の入った自転車の横で、パイプ椅子に座っている初老の男性が彼に話しかけてきた
「その娘かい?なるほど、べっぴんさんだなぁ」
顔を赤くして視線を逸らした彼は、思いがけない言葉を発した
「描いてもらえますか?彼女の似顔絵」
えっ?
「似顔絵…って?」
良く見ると男性の前には「似顔絵」と書かれた立て札が置いてあって
「なんだい、その娘に話してないのかい?実は…」
夜の街で似顔絵師をしている、という男性の話によると
数日前、画材を積んだ自転車のチェーンが切れて困っていたところにバイト帰りの彼が通りかかって
「修理を手伝ってくれた礼に兄ちゃんの似顔絵を描いてやるって言ったら、自分はいいから描いて欲しい人がいるって言うもんだからさ」
それって、わたし?
もしかして『おまえがいい』って、そういう意味だったの⁉︎
「まぁ、な」
一気に体の力が抜けてふらついたわたしを折り畳み式の椅子に座らせると
「そういうことだから、しばらくじっとしててくれ」
彼は子供のような笑顔を見せた
continue(次回に続きます)↓