※このお話にはオリキャラが登場しますのでご理解の上でお読みください。             




                    『distance 7』





「なにやってんだ、あいつ」


どうしても会いたい気持ちを抑えきれずに探しにやって来た魔界で


ようやく見つけた彼女はなぜか、薄暗い森の中で両手を組み祈るようにして一点を見つめていた


やがて


ほっとしたように笑顔になった彼女にそっと近づくと


「きゃっ!」


後ろから抱きしめ、耳元で滅多に呼ぶことのない名前を囁いた


「えっ!?どうして?」


「用が済んだんなら帰るぞ」


できることなら永遠に抱いていたいとすら思う温もりを解放して、細い腕に手をかけた瞬間 


「もう少し、このままでいて」


正面から飛び込んできた彼女が背中に両手を回して俺の胸に顔を埋めた


「泣いてるのか?」


「泣いてなんかないもん」


明らかに涙声のくせに、こんな風に強がるのはいつもの彼女らしくない


3日前の早朝だってそうだ


「なんで起こさなかったんだよ、差し入れ持って来た時」


「ぐっすり寝てたから起こしたくなかったし、顔を合わせたらきっと離れたくないって思っちゃうから」


まぁ、そんなところだろうとは思ったが


「とりあえず、帰ろう。話は後でゆっくり聞くから」


「帰るって、どこへ?」


「そうだな…」


ここはいったん彼女の家に戻るべきだと頭では分かっていたが


しがみついたままの彼女を抱きしめテレポートした先は、自分のテリトリーである狭いアパートの部屋の中


「んっ!」



驚いた顔で彼女が俺を見上げてからキスをするまでの時間は



たぶん、1秒もかかっていなかった



continue(次回に続きます)↓