※このお話にはオリキャラが登場しますのでご理解の上でお読みください。
『distance 5』
ようやく慣れてきた引越しのバイトはいったん中断し、ジムの合宿に出かける日の早朝
『おはよう』
夢の中で微かに彼女の声が聞こえた気がした
おそらく幻聴だろう…そう思いながらまどろみ続けていたがしばらくすると、けたたましい時計のアラーム音で目を覚ました
まだ完全に覚醒しきれていない頭で狭い部屋を見渡して見ても、やはり彼女の姿があるはずもなく
「夢…だよな」
少し期待していた自分に苦笑いしながら起き上がると、部屋の入り口に昨夜は無かった小さなバスケットが置かれていた
中にはランチボックスと『サンドイッチ作って来たから良かったら食べてね。勝手に入ってごめんなさい、合宿頑張ってね。』と彼女の筆跡で書かれたメモがあり
「いつの間に?」
合鍵で入ったのだろうが、いくら疲れていたとはいえ彼女が来たことに気がつかないなんて
「…」
思うところはいろいろあったが、出発時刻が迫っていた
とりあえず
ありがたく差し入れのサンドイッチを朝食にして、予定通り合宿に向かい
3日後
戻って来たその足で彼女の家まで会いに行くことにした
日が落ちかかってはいたが、これくらいの時間ならゆっくり話もできるだろう
そう思い玄関のチャイムを鳴らしたのだが、出てきた彼女の弟に全く予期していなかったことを告げられた
「お姉ちゃん、魔界に行っちゃってるんだけど」
「魔界?」
「うん、最近良く行ってるんだ」
元はと言えばしばらく会えないと言い出したのは俺の方だが
こんなに長い期間すれ違ったままになるなんて思ってもいなかった
「いったい、なにをしに行ったんだ?」
真っ暗な夜空を仰いで深いため息をつき、それでも今夜はどうしても
「えっとね、詳しいことは知らないんだけど」
「ヴァンパイアの友達?」
行くしかないだろう、吸血鬼の村とやらに
continue(次回に続きます)↓