『strawberry 5』






「準備完了♪」



家族が寝静まったキッチンで


明日、クラスの友達に配るために作った大量のチョコクッキーをラッピングし終わると


「じゃあ、次は本命の…」


冷蔵庫から放課後買って来た苺のパックを取り出した


「だって、チョコはいらないって言われたけど『何もいらない』とは言われなかったもん」


そう、これから彼のために作るのは苺のチョコレートがけ


チョコをほんの少し乗せる程度だったらほぼフルーツだもん、ビタミンも取れるし甘過ぎないから食べてくれるんじゃないかなぁって


これって屁理屈、になるのかなぁ?


それにしても


今日の彼は、ほんっとにどこかおかしかった


甘いムード、どころかなんのやりとりもしない状態で…しかも人目が無かったとは言え校舎内でいきなりキスをするなんて


しかも2回も


なにかわたしに言えない事情があるのか、それとも


ううん


一瞬浮かんだ悪い想像はすぐに頭の中から消去することができた


だって


今日、彼にキスされた時に触れられた腕や肩や背中や…唇


つまり全身で感じたのは、紛れもなくわたしを愛おしいって思ってくれている彼の言葉にならない感情だったから


「や、やだ…わたしってばまた勝手なことを。そんなことより苺の味見をしてみなきゃ」


自分で言って照れくさくなってしまったわたしは、手に持っていた一粒の大きな苺に思わず牙を立てて噛みついてしまった


あっ!


しまった!と思ったけど、時すでに遅し


苺に変身したわたしは、ひんやりとしたキッチンのテーブルの上に転がっていた


どうしよう


家族はみんな寝てしまったから(お父さんは起きてるだろうけど、執筆中だしキッチンになんてたぶん来ないはず)朝までわたしは苺のまま?


絶望的な気分になったその時


「災いってこれのことかよ」


キッチンのドアの方から、呆れたような彼の声が聞こえた

 



continue(次回に続きます)↓