『strawberry 4』




悪夢のような夜が明け


寝不足で回らない頭で魔女に言われた結界を張る方法を考えてはみたものの

「一緒に暮らしてるわけでもねぇのに、1日に何度もキスなんて出来るわけねぇだろ」

しかも何なんだよ、チョコだかバレンタインだかがもたらす災いって

あの婆さん、魔界が平和になってやることなくなっちまって腕が鈍ってんじゃねーのか?

とはいえ

24時間彼女と一緒にいてやれないからこそ、念のために結界を張っておくしか選択肢はないだろう

怪しまれないようにそんな雰囲気に持っていく時間もアイデアもないまま、とりあえず登校直後に強引にキスをしたまでは良かったが

当然のように不信感を抱かれてしまった

これをあと2回…って、どう考えても無理に決まってる

それでも

「今からジムに行くんだよね?頑張ってね」

午後も学校に残ってやることがあると言っていた彼女が俺を見送り来たタイミングで

「ちょっと、こっちに来い」

「へ?」

シューズロッカーの隅にある物置の陰に彼女を隠すようして、柔らかい唇にそっと口づけをして素早く体を離した

さすがに2回目ともなると彼女の驚き方も半端ではなく

「あのっ、ほんっとにどうしちゃったの?」

目をまん丸にして俺の顔を覗き込んでいる

「どうもしねぇって、じゃあな」

視線を逸らしてそう答えると、足早にその場を立ち去るしか他になかった

そして

深夜に近い時刻にバイトが終わり

結界を張るための最後のキスをどうするか…途方に暮れながら彼女の家の前までやっては来たが、時間が時間だけに

「寝てる…だろうな」

いや、むしろ眠っていてくれた方がやりやすいかもしれない

ほとんど犯罪行為に近いと分かってはいるが…意を決して彼女の部屋に力を使ってテレポートした

ところが

「えっ?」

とっくに眠っていると思った彼女の姿は部屋のどこにも見当たらなかった



continue(次回に続きます)↓


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