『twins』




「ほんっとにそっくりだったの!」


久しぶりに暖かい日差しの下でのお買い物デートの休憩中

彼が飲み物を買いに行ってくれている間に、屋外のフードコートで仲の良いクラスメートを見つけて声をかけたら

「別の学校に通ってる双子のお姉さんだったの。顔だけじゃなくて髪型や体型もほとんど一緒だったから驚いちゃって…一卵性だから良く間違われるんだって。」

「双子ねぇ…」

温かいレモンティーをわたしに手渡しながら二人掛けのベンチの隣に腰を下ろした彼は、ブラックコーヒーを一口飲んで何か言いたげな表情をした

そっか

彼にも双子の弟がいたんだった

見た目も性格もあんまり似てないけど

「あんまりじゃなくて、まったく似てねぇ弟…な」

「もう、またわたしの考えてること読んでる…」

まぁ、たしかに彼は双子とは言え生まれた時から別々の場所でお互いの存在すら知らないまま育てられたわけだけど

でもやっぱり同じ両親から生まれた兄弟なんだし、どこかしら似たところはあるんじゃないかなぁ 

「そっちだって、同じ親から生まれた弟は賢くてしっかり者で…おまえとは似ても似つかねぇじゃねーか」

「そっか言われてみれば…って、ちょっと!」

ひどい!間違ってはないけど

あっ、でも待って

「好きな女の子のタイプは一緒なんじゃない?」

わたしがそう言った途端、彼は飲んでいたコーヒーがむせたのか思いっきり咳き込んでしまった

「なんだって?」

へ?

わたし、そんなに変なこと言ってないよね?

だって数年前まで彼の弟には散々言い寄られて大変な思いをしたんだもん

今でこそ素敵な奥様と結婚して幸せそうだけど、いつだったかは『惚れ薬』なんて物まで飲まされて

「なんだよ、その惚れ薬って?」

怪訝そうに彼がわたしの頬を軽くつねった

「いたっ!な、なんでもありません。」

昔のことだもん、今さら蒸し返すのはやっぱり良くないよね

「だから、その…つまり。」

兄弟揃ってわたしに好意を持ってくれたってことでいいんだよね?

「関係ねぇよ。」

「えっ?」

ちょっとまって

まさかとは思うけど、彼はわたしのことなんてタイプじゃないけどしつこく迫られたから仕方なくってこと?

「なんでそうなるんだ、馬鹿。」

えっと、じゃあ?

「だから、おまえに惹かれない男の方が珍しいっていうか…」

言ってから照れくさくなったのか、彼は残りのコーヒーを飲み干すと立ち上がってどこかへ歩き出してしまった

「あっ、ちょっ…ええっ?」

慌てて彼の背中を追いかけて行く途中

柔らかい日差しに包まれるようにして、可愛いらしい双子の赤ちゃんを乗せたベビーカーがすれ違って行った



fin


※今朝、2月5日はふたごの日だと聞いたので突貫工事で書きました。相変わらずテキトーですみませんタラー