『secret halloween 2』
「わたしってほんとにバカ」
行っちゃダメだって頭ではわかっているのに
目を閉じて深呼吸して
地下室の重たい『未来への扉』を開けてしまった
ここは、どこなんだろう?
アロマオイルのような良い香りがしてそっと目を開けると
「し、寝室?」
日当たりの良さそうな室内にシンプルなベッドが二つ並んで置かれていた
「もしかして彼とわたしの…」
想像しただけで顔から火が出そうなほど照れてしまってジタバタしていると
「おかあさん、いるの?夜まで帰らないんじゃなかったの?」
突然、後ろにあったドアが開いて
「えっ?」
わたしに良く似た長い黒髪の少女が部屋の入り口で驚いた顔で立ちすくんでいる
「あ、あのっ…わたし」
次の瞬間
「やだ、ちょっと嘘でしょう?」
そう言うと少女はお腹を抱えて大笑いし始めた
「おかあさんってば、なんでそんなに気合いの入った仮装してるの!?」
仮装?
「その制服って高校生の時の?いったいどこから持って来たの?」
「えっと、それは」
良く見ると少女は見覚えのある黒いマントをつけている
「その格好って、もしかして吸血鬼…」
「前から言ってたじゃない、今年はこれにするって。さっきおじいちゃんに見せに行ったら『さすが吸血鬼の孫だ、良く似合ってるぞ』ってすごく喜んでお菓子だけじゃなくてお小遣いまで貰っちゃった」
「あなたのおじいさんって吸血鬼なの?」
だとしたらこれはもう
「おかあさん、具合でも悪いの?」
心配そうにこっちに近づいてきてわたしの顔を覗き込む大きな瞳はどことなく彼の面影があるような無いような
「それにしてもそのウィッグ、良く出来てるね」
ウィッグ?
「おとうさん、すごく喜ぶと思うよ。だってさ覚えてる?」
「な、なにを?」
「おかあさんが髪をバッサリ切った日のお父さん、この世の終わりみたいな顔で玄関で10分くらい茫然としてたじゃない。」
「誰がこの世の終わりみたいな顔だって?」
ドアの向こうから聞こえて来たこの声は!
もしかして、もしかしなくても
「あっ、噂をすればおとうさんだ。ねぇ、見て見ておかあさんのハロウィーンの仮装」
ハロウィーン?
楽しそうに手招きする少女の後ろから現れたのは
今よりずっと大人っぽい姿の『彼』だった
continue(次回に続きます)↓