『cherish 1』
「こらっ、聞いてるのか?」
「あっ、ごめんなさい…何だっけ?」
お昼休みの屋上でお弁当を食べながら考え事をしていたら彼の言葉を聞き逃してしまったらしく
「ぼんやりしてどうした?」
「なんでもないの、ほんとにごめんなさい。それで、何の話だったっけ?」
「何の話って…試合も終わったし今度の連休の最終日、午後からどっか行かねぇかって誘ってたんだけど?」
明後日の方向を向いてそう言った彼の横顔は少し赤くなっているように見えて
「それって、デートのお誘い…」
「何度も同じことを言わせるな。」
口元を手で覆った彼は本格的に照れている。
「…嬉しい。でも、ジムやアルバイトは?」
外でのデートなんて久しぶりだからほんとにほんとに嬉しいんだけど、やっぱり気になるのは彼のハードなスケジュールで
「トレーニングは午前中に済ませるし、連休中のバイトは夜勤ばっかで最終日は休みだから大丈夫だ。」
…てことは
「夜勤明けでジムに行ってそれからってこと?」
さすがにそれは少しきついんじゃ
「夜勤って言っても明け方前に終わるから仮眠は取れるし、俺のことは気にしなくていいから。」
「アパートでゆっくりするんじゃダメ?わざわざ外出しなくても…」
むしろわたしはそっちの方がいいかも
「ボロアパートで飯食うのなんてデートって言わねぇだろう。とにかく、どっか行きたいところを考えといてくれ。」
「わたしが行きたいところでいいの?」
「まぁな、午後からだからあまり遠くへは行けねぇけど。」
やっぱり照れくさそうな彼の優しいお誘いを断るなんて出来るはずもなく
「ありがとう、行きたいところ考えとくね。」
とびきりの笑顔で彼に感謝を伝えた…つもりだったけど
ちゃんと笑えていたよね?
continue(次回に続きます)↓