※今回は再びプロポーズ後のお話になります。
『get drunk 1』
「ねぇ、大丈夫?」
アパートに帰り着くなり畳の上に寝転がってしまった彼からの返事は無く
「どうしよう…」
今夜は高校時代のボクシング部の仲間が集まって、わたしと彼の結婚が決まったお祝いにと居酒屋風のお店で食事会を開いてくれて
懐かしい顔ぶれに祝福されながら過ごす時間はとっても楽しくて、あっという間にお開きとなってしまったのだけれど
普段はあまり飲まくてもそれなりにお酒に強いはずの彼が酔ってしまい、アパートに着いた途端に倒れ込むようにして眠ってしまった
その理由は
お祝いの主役だからとグラスが空く度に注がれたアルコールドリンクを自分の分だけでなく、さりげなくお酒に弱いわたしの分まで飲んでくれていたからに他ならない
それでもアパートに帰り着くまでは足元がふらつく事も無く、ちゃんとわたしの手を引いていてくれたのはさすがと言うしかなくて
今夜は彼のところに泊まると言って家を出てきたのは良かったのだけれど
いったいどうすればいいんだろう
お水を飲ませてあげたくても、こんなにぐっすり眠っているんじゃ…
とりあえず
先にシャワーを浴びることにしてお風呂を借りて、パジャマに着替えて戻って来ても彼は同じ姿勢で眠り続けていた
せめてお布団の上で寝て欲しいと思ってもわたしの力で彼の体を動かすのは難しくって
だったら衣服だけでも出来るだけ緩めてあげようと、彼が着ているブルーのコットンシャツのボタンを外し始めた
「酒はあまり飲むなよ」
出掛ける前に彼女にそう釘を刺したのには理由がある
そもそもアルコールに強くない者にとっての飲酒は百害あって一利なしだし、今夜はうちに泊まるとしても明日の朝に彼女を二日酔いのまま家に帰すのだけは絶対に避けたかった
まだ正式に結婚したわけでもないのに、大事なひとり娘が俺の部屋に泊まるのを許してくれている親父さんたちに極力心配をかけたくない
そんな思いから彼女のグラスに酒が注がれる度、頃合いを見計らってそっと取り上げ俺が飲み干し続けること2時間
さすがに途中からは周囲に気づかれ『過保護過ぎる』だなんだとからかわれたものの、何とか彼女に深酒させることなくお開きとなり
ふたりでアパートの外階段を上ったところまでは記憶している
ふと彼女の繊細な指が体に触れている感触がしてうっすらと目を開けると
はだけたシャツの下に着ていたアンダーウェアの上から俺の胸の辺りをさすっている彼女の姿が見えた
まだかなり酔いが回っている頭で何とかこの状況を把握しようとしても上手くいかず
「寝込みを襲ってんじゃねーよ」
畳の上に寝そべったまま、本能にしたがって彼女を両腕に抱え込んだ
continue(次回に続きます)↓