『love game 10』






「幸せ過ぎて死にそう。」



たかが水族館でのデートとごくごくカジュアルなレストランでの食事程度で涙ぐんでそこまで言われると、いかに普段の俺が彼女に何もしてやっていないのかという事実を突きつけられているようでこっちの方が泣きたくなったけれど


とりあえず、彼女が喜んでくれているのは間違いないし今のところ誕生日のサプライズは成功している…と思いたかった


泣いたり笑ったりしながら何とか食事を済ませた彼女を連れて電車に乗り、次に向かったのは駅ビルの中にあるファンシーショップ


今回いろいろと協力してもらった彼女の弟に、礼は何がいいかとあらかじめ聞いておいたのだが


『えっとねぇ、可愛い犬のぬいぐるみ。彼女にプレゼントするんだ。』


と即答されていた


「ガキのくせにしっかりしてるよな。」


「だったらそれはわたしに買わせて、わたしの弟なんだし。」


「俺が約束したことだから、おまえは選ぶのを手伝ってくれればそれでいい。」


「でも…」


納得していない様子の彼女を促しぬいぐるみの並んでいるコーナーへ行くと


「わぁ、可愛い。」


彼女が最初に抱き上げたのは猫のぬいぐるみで


しかも驚いたことに俺が見つけた捨て猫にそっくりなやつだった


「あいつは犬がいいって言ってたぞ。」


「あっ、そっかぁ。じゃあねぇ…」


結局、彼女が時間を掛けて選んだのは柴犬の小さなぬいぐるみだった


ラッピングをしてもらい店を出る頃には日が傾き始めていたので彼女を家に送ることにする


朝から連れ回したのでかなり疲れているはずだし、せっかくの誕生日なんだから夕食は家族でお祝いしたいだろう


「じゃあ、これは弟に渡しておいてくれ。」


彼女の家に着き門の前で紙袋を渡すと


「いろいろありがとう。ねぇ、良かったらお夕飯うちで食べていかない?」


名残惜しそうに縋り付くような目で見つめられ、このままアパートの自分の部屋に連れて行きたくなってしまうのを必死で堪えて


「いや、明日も朝早いからまた今度な。」


「う、うん。今日はほんとにありが…」


今日、何度目か分からない『ありがとう』の言葉を触れるだけの口づけで阻止する


「じゃあ、またな。」


振り返らずにその場を後にして、少し離れたところで彼女の弟に最後の司令をテレパシーで送った






continue(次回のおまけに続きます)↓