水族館を出てもつながれたままの手を引かれ、やって来たのは
白い壁に青い屋根の海沿いにあるレストラン
「腹減っただろ?」
「えっと、でも…」
こういうとこって、そこそこのお値段がする気がする
さっきの水族館のチケットも彼が用意してくれていたし、これ以上負担を掛けるのは申し訳なくて
そんなことを考えていると、解かれた手で背中を軽く叩かれた
「いい加減にしろ、予約してあるんだから行くぞ」
「予約って…」
だから今日はいつものジーンズじゃなくて紺色のジャケットにチノパンというセミフォーマルのような格好だったの?
「ごちゃごちゃ言ってないで入るぞ」
海の見える窓側の席に案内されて座ると、おすすめされたランチのコースメニューを彼が頼んでくれて
「デザートは誕生日だしケーキでいいよな」
「えっ?」
「ダメなのか?」
「そうじゃなくって」
いったい、彼はいつから今日の予定を立ててくれていたんだろう
「どうして直接誘ってくれなかったの?」
「どうしてって、プレゼントの内容を先に言ったらつまんねぇだろ」
「そんなこと…」
だいたい弟が教えてくれるのがもう少し遅かったら、今日の朝ちゃんと準備して待っていることも出来なかったかもしれない
「あいつにはちゃんとおまえに伝えるタイミングは指示してたからな。おまえの退屈しのぎの相手もちゃんとやってくれてたみたいだし、ほんとに出来た弟だよ」
前菜のサラダを食べながらひとつ、またひとつとネタバラシをしてくれる
「バイトを増やしたのは今日のため?」
「それは別に…夏休みで学校に行かなくていいからな、稼げる時に稼いでおきたいだけだ」
多分これは嘘
「ジムは?トレーニングとかお休みして良かったの?」
「軽くランニングして来たし、1日くらいは大丈夫だから気にしなくていい」
どうしよう
次々と美味しそうなお料理が運ばれてくるのに、胸がいっぱいで喉を通りそうにないよ
「いつもしてもらうばっかりだからな。誕生日くらいは普段と違うことをしてやりたかっただけだ」
ついに涙がこぼれるのを抑え切れなくなったわたしを見て彼は苦笑いしながらため息をついた
「泣くなよ、バカ」
「だって、幸せ過ぎて死にそう…」
continue(次回に続きます)↓