「お姉ちゃん、ほんとにそこでいいの?」
「えっと、ダメ…かな?」
「ダメじゃないけど、ほらっ。」
「あー!」
「またお姉ちゃんの負けだよ。」
夕食後のリビングで久しぶりに弟とボードゲームで遊んでいたのだけれど
まさかの小学生相手に連戦連敗
どうして?
「お姉ちゃんてさ、駆け引きがほんとに苦手だよね。」
「駆け引きって?」
「だからさぁ、こういうゲームって相手に気づかれないように自分が有利になる場所に誘い込むとか逃げ道を塞ぐとかしないと勝てっこないよ。」
弟は確かにわたしより勉強も出来るし賢いってのは認めるけれど
「ねぇ、本当に小学生なの?」
「お姉ちゃんこそ、ほんとに高校生なの?」
…返す言葉もございません
「お兄ちゃんも大変だよね。」
弟が片付けをしながらため息混じりに呟いた
「それって、どういう意味?」
「さあね、お兄ちゃんに聞いてみれば?」
ちょっぴり生意気な弟の言葉にもやもやした翌日
学校からの帰り道でジムに行っているはずの彼の姿を思わぬところで見かけてびっくりした
それは
ペットの美容室
まるでオシャレなカフェのような店内は一面ガラス張りになっていてはっきりと中を見通すことが出来て
絶対に見間違うことのない大好きな彼が店員さんと思しきエプロン姿の若い女性ととても親しげに話している
しかも
あまり見たことのないようなはにかんだ優しい笑顔で
ちょっと待って
彼が先週から始めたって言っていた新しいアルバイトは確か、レンタカー屋さんでの洗車の仕事だって聞いていた
人見知りで接客業が苦手な彼はどちらかといえばそういった肉体労働系の仕事を選んでバイトをしていたし、そもそもペットのトリミングなんて資格が無いと難しいだろうからここで働いているなんてことはまず考えられない
かといって
彼の住んでいるアパートではペットなんて飼えないし彼にはそんな時間的、経済的な余裕はないはず
だから
どうして
彼がこんなところにいるんだろう?
continue(次回に続きます)↓
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