年齢不詳、

体型は細身で色黒、

服装はほぼ毎日霞んだ緑のパーカー。

申し訳ないのだが、

私の第一印象は、「何か気持ち悪い」

どうして気持ち悪いのかを

説明できないのも

また、気持ち悪かった。


「今日からこの人が顧問かぁ〜」

ワクワクしない心から、

すでに私は、

何かを感じ取っていたのかもしれない。

今まで以上に波乱で切ない、

2年間になることを。

あの瞬間から、

あの人と対面した時から、

私たちのバレー人生を揺るがす大事件が

起きることが…。


【初日】

あの人は、

寡黙そうな雰囲気を漂わせ、

椅子に腰掛け、足を組み、

私たちの練習を見つめていた。


あの人は、異様に冷静だった。

そう感じたのは、

あの人のバレー経歴にあった。

全くと言っていいほど、

あの人にはバレー実績が無かった。


バレー界では初心者の段階のあの人が、

この世界の指導者になったのだから、

正直こんな抜擢があり得るのかと、

私たちは不信感を募らせていた。


バレーの技術に対して、

あの人よりも遥かに上手い私たちが、

あの人から何を学び、

技術を向上させていくのか。

誰も想像できなかった。


だけど、

気がかりなのは、

こんなにも、

実績も技術もない、あの人が、

誰よりも冷静であったこと。



後々私たちは気づくことになる。

あの人は、

この世界で指導者として生きる為に、

人としての大事な物を全て捨てたのだと。


ある意味、あの人も

この世界の犠牲者なのかもしれない。



冷酷な人間になったあの人と、

私たちの壮絶な闘いの幕が上がる…。


to be continued