私たちはこれからも

ゴールが見えない暗闇の中を

ひたすら歩き続ける運命の最中にいた。


この時私たちは、

現状打破を目指す一方で、

目まぐるしく変化する日々を

消化することで精一杯になっていた。


現状を変えたい想いはいつしか、

遠く手の届かない場所に消えかけていた。



中1中2の成績は、

まさにこの世界の暗黒期。

何十年にも渡って紡いできた

全中連続出場を

私たちが途切れさせた時代。



強豪校の名を汚したことは

この世界にとって重罪に値する。

罪を犯した者には、当然罰がある。

その罰がO先生の解任であったのだと、

中学生の私たちですら、察していた。



「この世界は結果がすべてである」

そのために、私たちが集結した。

だからこそ、このチームが負けることは、

おかしな話であることも理解している。

なのに、

私たちは2年連続全中を逃すことになる。


「必ず勝てる」ものだと信じていたし、

周りからも信じられていた。

常勝軍団として「勝つ」ことが

私たちの当たり前であり、

宿命であったから。


だけど、

負ける理由も

勝つ理由と同じく

必ず裏付けがある。

まさに、

暗黒期を創り出したのは紛れもなく、

私たち自身であることは明確であった。



それもこれもいつからだろう…

練習が単純作業になっていたのは…

ボールに気持ちが乗らなくなったのは…


淡々とレシーブして、

淡々とトスを上げて、

淡々とスパイクを打つ。

やるべきことを

淡々とこなす機械的な作業。


今、冷静になって考えてみると、

すでにこの世界の秩序は崩壊していた。


2つ上の先輩が醸し出す異様な空気感。

それに飲み込まれる後輩たち。

その空気の流れは最終的に

O先生のもとにまでやってきた。


はっきり言って、

「こんなチームが勝てる世界は世の末」

とさえ思っていた。

そのぐらい最上級生の

バレーに対する態度の悪さ、

顧問に対する敬意の無さ、

後輩いじめ、

集団圧力、

言葉の暴力、

このどれもが、

勝つべき人間に値する要素から

かけ離れていた。

「負けるべくして負けた」

この言葉がぴったしのチームとなっていた。



この世界の住人は、

みんながみんな一流の人間ではない。

むしろ、

バレーだけは一流で、

あとは終わっているのかもしれない。


これは、

この世界に入り込んだ私だからこそ、

行き着いた現実である。 


周りの人はみんな、

私たちを「凄いね」と称賛してくれるが、

凄いのは私たちではなく、

私たちを取り巻く環境と

過去の成績である。


その壁に最初にぶち当たったのが、

最上級生であったのだと思う。

常に先輩後輩関係なく比較され、

その度に自分の居場所を突きつけられる。

実力主義の世界には年齢は関係ない。

でも、そんな理屈も

人間のエゴの前では何の意味も持たない。

歳上としての威厳を守るため、

可愛い自分を守るため、

感情的になるのが人間である。

何とかして自分が優位であることの

証明をひたすら探しまわることもある。

その過程で、

負のエネルギーが肥大化し、

負のスパイラルへの扉が

開いてしまうこともあるかもしれない。


だけど、上級生が行ってきた言動は

許されることではない。

わかってはいる。

わかってはいるけど…

わかりたくもない自分がいる…


to be continued