ーO先生ー


新顧問と同時期に私たちは、

この世界の扉を開いた。

新顧問はOGのO先生。

バレー界の第一線で闘ってきた経歴を持ち、

技術はもちろん、洞察力に長けていて、

視野がとても広かった。

そして、人柄もチャーミングで、

生徒からも人気者の顔も持っていた。

私はそんなO先生が大好きだった。


堅苦しい昭和気質な年配男性指導者が

蔓延るバレー界に、

O先生は稀有な存在として、

革新を起こしてくれるのではないかと

私はワクワクしていた。


そう思い始めたのは、

小学生の頃から、

体罰が頻繁に行われていることを

認識していたことがきっかけである。


勝てば勝つほど、

強いチームと対戦させてもらえることに

喜びを感じたいた一方、

強いチームの監督やコーチの

指導方法に疑問を抱くようになっていた。


大きな体育館の中でも、

十分過ぎるほど響き渡る怒号。

泣きながらボールを追いかける選手。

辺りを見渡すと、どこかしらで

何かしらの体罰(身体的・精神的)が

行われている環境に心が痛んだ。


「ここまでしないと勝てないのか…?」


「選手を身体的・精神的に疲弊されることが

指導者のやるべきことなのか…?」


そして、

それを容認している周りの大人(保護者)

に少し呆れてしまっていた。


この無法地帯の始まりを

自分なりに考えてみた。


その結果、

この無法地帯を作り上げるのに

重要なピースは、

「絶対的権力を握る指導者」が

醸し出す空気感にあるのではないか。


まさにこの指導者独走体制が、

バレー界の闇、

バレー界のありままの姿ではないか。

バレー界は、

他でもない「同調圧力」の巣窟である。


だから私は、O先生の指導にベットしたのだ。


自身の手は、相手に喝を入れ、

一瞬で従わさせる道具として使い、

自身の口は、相手を罵倒して、

一瞬で従わさせる手段として使う。

愚かな指導者とは違い、

O先生は、

自身の手は、相手の技術を向上させるための

積極的な指導をする道具として使い、

自身の口は、相手を理解するための

積極的な対話を築く手段として使う。


O先生と一緒なら

私のバレー人生はこれからも、

ワクワクすること間違いないと思っていた。


あの時までは…


to be continued