寂しそうな声・・・・・
それ以上訊きたくなくて、思わず私は抱きしめた。
想いの交差
「ふふ・・・大丈夫ですよ」
頭上から聞こえた声に顔を上げると
いつもと変わらない表情で、優しい眼差しで私を見つめ
額に口付けを落とした。
「弁慶さん」
「はい」
「私・・・一緒にいますから」
「望美さん?」
「約束ですから」
そう言って弁慶さんの胸に顔を埋め
回して手で、弁慶さんが離れていかないようにぎゅっと掴んだ。
そんな私に返事を返さず優しく背を撫でる弁慶さんの手の温もりに
泣きそうになる。
一緒に居てほしいって願ったのは私。
誰を想っても傍にいると誓ったのは私。
その私の思いを受け入れてくれたのは弁慶さん。
それなのに・・・
それなのに・・・
(どうして・・・こんなにも苦しいの)
どんなに考えても答えなど出る訳ない。
恐れているのは、もしかしたら弁慶さんではなく私?
「望美さん・・どうしました?」
「ううん。弁慶さんは温かいって・・」
「ふふ・・・そうですか?」
「うん」
顔を上げれば、優しい口付けが降ってくる。
でも・・ね
「僕はあなたを愛しています」
あの人に言ったような言の葉は私には向けられない・・・・
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あとがき
『境界線』の続きです。うん、久しぶりの更新ね。