大人気がなくても2 | As lagrimas que a lua derramou~月が零した涙

As lagrimas que a lua derramou~月が零した涙

版権作品にオリジナル人物を入れての二次創作小説を載せてます。
『遙か』シリーズが中心です

ほら・・・


君は僕を惑わせる









大人気がなくても




「・・・・・はぁ・・・」


「どうしたんだい?弁慶・・」


逃げるように離れた後に出たため息。

心配そうに声を掛けてきた景時に「何でもない」とだけ

告げると、自室へ戻る。


「・・・どうかしている・・・」


そう・・・・・


今まで、こんな事など無かった。


(こんな風に・・誰かに執着するなんて・・)


彼女が居ないと、何処か物足りなくて。

楽しい時間も楽しいと感じない。

彼女が視界に映るだけで、心が暖かくなる。

彼女が僕の名前を呼ぶだけで、幸せに感じる。


彼女との時間が、あまりにも心地よくて


そして―――――


「・・・・・欲しくなるんだ・・・」


華奢な身体を引き寄せて。

強く抱きしめ、あの唇に己の唇を重ね

息が止まるほど口づけを落としたい。


彼女のすべてが欲しくなるんだ・・・・


けれど・・・


「それは・・・全部、僕の思いだけ・・・・」


でも、心も身体も彼女を欲している。

これほどまでの熱を自分が持っていた事に驚きを隠せない。


「・・・・・はぁ・・・」


「弁慶さん・・・・いいですか?」


再び吐き出した溜息と同時に聞こえたのは

彼女の声。

部屋の入口へ視線を向けると、スッ・・と襖が開き

オズオズと顔を覗かせる君の姿に

再び心の奥に掛かっていた何かがカチャリと音を立てる。


「どうしたんですか?」


「・・・あ・・・あの・・・」


いつもと変わらない様に、笑顔をむけたけれど

君は悲しそうな顔を変える事はなくて・・・・


「・・・どこか、具合でも?ああ・・・・九郎の薬は、

先ほど景時に渡しましたよ・・・」


「え・・・・あ・・・はい・・・」


俯いたと思ったらすぐに顔を上げて

僕に笑顔を向ける。


だが、その笑顔はいつもの笑顔とは違っていて。

ぎこちなく、どこか無理をしているように思えた。


「・・どう・・「何でもないんです。すみません・・」」


僕の言葉を遮り、君はペコリと頭を下げて部屋から出ていく。

残されたのは、君の残り香だけ・・・・


「・・・・・」


「あれ~?弁慶・・一人なのかい?」


「景時」


部屋の入口をただ見ていた僕に、通りかかった景時が

不思議そうにキョロキョロと辺りを見渡す。


「どういうことです?」


「え?来ていただろう?」


彼女・・と景時はニコニコして話すが僕には理解が出来ないままだ。


「弁慶がどこか無理しているみたいだからって」


心配だからって・・食事を持っていくと言っていたよ。と

言葉が紡がれ、視線を落とすと視界に入っていたのは

小さな小さな赤い点。


「ッ!」


「ちょ、べ、弁慶!どこ行くんだよ!」


景時の声を振り切り、部屋から飛び出した。















あとがき

彼女の名前を募集中で~す。

まだ続きますけど・・・ね。

次回は彼女の視点にします。