「苦しいのは自分だけだと思う考えはダメだと思う」
そう言って、離れていった友人たち。
「ほら・・・見て・・・」
突き刺さる視線
嫌悪感
そして
「どうしてあの人は私じゃなくてあの女を選ぶのよっ!」
幼い頃から、母は泣きながら家で叫び続けてきた。
怒りと憎しみを持ち続けてきて。
「私を愛していると言ったじゃないの?!」
「・・・あいつが泣いている、あいつを守りたいんだ」
「私は良いって言うのッ!!!」
幼い頃、一度だけ来た私の『父』は母にそう伝え
泣き叫ぶ母と、その様子を見ていた私を残し
それっきりだった。
母は狂ったかのように、毎日電話をし
会うために赴いたが結局『父』は会うことはなかった。
「憎い・・・・憎い・・・・あの女が憎い・・・」
母に連れられて来た場所、
遠くで、幸せな顔を見せている小さな幼子。
その幼子を愛しそうに見つめるのは
『父』と『父』の愛する妻。
私の手を握る母の手から感じるのは
惨めな思い。
「私を・・・・妻に・・と言ったのに・・・」
母の言葉を訊きながら、私はもう一度
あの幼子を見つめた。
私が愛されないのは
あの子が存在(いる)から
あの子が笑顔でいるとき
私は・・・・・・・・
「・・・・・あんたはいつも愛されていた
いつもいつもあんたをみんなが愛して・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「その影で、私がどれだけ惨めな思いだったかわかるっ!!」
彰子は、咲弥を睨み思いを吐き出した。
「・・・・・・自分だけが不幸だと言う人は
その努力を怠るからでしょ?」
「っ!」
「あの時、私の母も悩み私も悩んだ。
でも、前を向き進み笑顔でいることを決めた。
この先苦しい事があっても乗り越えていけるときめたから」
弁慶の後ろから前に歩み出る。
「あなたが言う言葉は、過去に縛られている哀れな女の成れの果て」