「あんたが私の幸せを全部奪ったんだッ?!」
遠い記憶、遠い世界で告げた言葉が
今、時空を越えて蘇る。
「義姉さん・・・って・・」
咲弥の口からでた言葉に望美は
驚き咲弥へ視線を向ける。
「彼女は、私の父と浮気相手との間に出来た人」
「・・・・・その義姉が何故この世界へ?」
「『翔』も一緒に連れてきたのね」
咲弥の口から初めて出た名前に彰子の顔が
ぴくりと動く。
「どういう事ですか?」
「おしゃべりの時間はここまでよ、裏切り者を始末しなければ」
咲弥を庇うかのように立った弁慶に
彰子はにやりと笑みを零す。
「変わらないね・・・。何一つ」
「あなたもよ・・。咲弥」
咲弥の言葉に、口角を上げて彰子は笑みを落とした。
***
「彰子さんと咲弥さんが、姉妹・・・・」
「神子様、今からでもおそくありませんよ」
ぽつりと呟いた望美へ視線を向けた彰子は
柔らかな微笑みを零し言葉をかける。
「平家と一緒にいるから『裏切り者』なんですよ
神子様と八葉がそこの二人を処分してくだされば
私が鎌倉殿に便宜を図りますよ」
「面白い事を言いますね、鎌倉殿がそれを許すとは思えません」
「弁慶殿、あなたの力も鎌倉殿は気にっていますよ」
「それは光栄です」
にこやかに微笑みながら返事を返す弁慶に
彰子も同じように笑顔で返す。
「けれど、僕は行きませんよ」
きっぱりと言い放ち彰子を見つめた瞳は
ひどく冷えた瞳だった。
「・・・それは、彼女がいるからかしら?」
「いいえ」
間髪入れずに返事を返した弁慶に
咲弥はツキン・・と胸の痛みを覚えた。
それの痛みを誰にも知られたくなくて
表情を変える事もできず、黙って二人の会話に耳を傾ける。
そんな咲弥の表情を見ながら
彰子は口角を上げて冷ややかな瞳を見せたが
「人の不幸を笑う人とは一緒に居たくないだけですよ」
次に弁慶の発した言葉を聞いた瞬間
彰子の顔は歪み唇をキツく噛み締めた。