第一章 第壱話 初めての感情(1) | As lagrimas que a lua derramou~月が零した涙

As lagrimas que a lua derramou~月が零した涙

版権作品にオリジナル人物を入れての二次創作小説を載せてます。
『遙か』シリーズが中心です

たとえば、人が人と出逢う事に理由はありますか?



この人を好きになってはいけないと思いながらも

止められない感情はどうしたらいい。







「咲弥先生」


「あれ?葦原くん、どうしたの?」


「あのさ、僕も千尋も同じ『葦原』だから名前で呼んでって

毎回言っているけど」


「そうだった、はは・・。忘れてた」


そう言ってニコニコ笑う咲弥に、那岐はなんとも言えず

小さくため息を吐くと、一番奥のベッドにゴロンと横になる。


「・・・・・あらら。大変だ」


「そう思うなら、協力して」


笑う咲弥を横目に、布団を被ると咲弥をぎろりと睨む。


「はいはい、じゃあカーテン引くから。少し寝たら?」


「そうする。千尋にも風早にも内緒にして」


カーテンを引かれ、周りから隔離された感覚。

那岐はぼんやりと天井を見上げた。

時折風が部屋に入り込んで、カーテンの隙間から見える

咲弥を見つめる。


部屋に流れているのは、聞いた事のない柔らかな音楽と

咲弥が走らせるペンの音だけ。


心地よい感覚に囚われながら、那岐は目を閉じた。