置いていかないで。
私を一人にしないで ―――。
過去の私が愛しい人に告げる言葉。
それは切なくて苦しい。
「・・・・・・・・」
「ぼんやりしている」
「怖いから」
「なんで?僕が居るのに?」
「 が居るけど怖いの」
俯く私をあなたはそっと抱きしめ
少し困った口調で話す。
「仕方ないな は」
「だって・・・・」
「咲弥さん」
聞こえた声に、意識が浮上する。
「弁慶・・・くん」
「魘されてましたよ」
そっと髪を撫でられ、頬に触れる手の温もりに
さっき見た夢が混同し思わず弁慶に抱きついた。
「咲弥さん?」
名前を呼ばれるが返事を返すことが出来ず
ただ黙ったまま、弁慶にしがみついた。
「怖くないですよ。僕が居るから」
「なんで、僕がいるのに?」
弁慶の声と夢の彼の声が重なる。
「本当に?」
「君が嫌だと言っても僕はあなたの傍に居ます」
言葉と同時に抱きしめる腕が強くなった気がした、と咲弥は思った。
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あとがき
こちらは『運命の迷宮』へ続く一部のお話。
誰なのかは、これからわかりますが、おそらく皆さんは
夢の彼が誰なのかわかりますよね。
ひねりがなくてすみません。