「あなた・・・平知盛・・・」
「知盛・・・?・・・いえ・・・・私は銀(しろがね)と申します」
「・・銀・・さん・・・?」
「銀とお呼び下さいませ。神子様」
耳に届く声、微笑む姿は『彼』と同じなのに・・
他の人を見ても驚いているのがわかる。
唯一代わらないのは咲弥だけ。
望美には、もうどの道を選んでいるのかわからない。
こんな展開など知らないのだ。
「神子様」
「将臣、咲弥」
そんな中不意に聞えた声に振り返ると九郎が眉間に皺を寄せて
将臣と咲弥、二人をじっと見ている。
「・・・・・お前・・・平家の人間だったのか・・」
「それが今の現状の意味があるの?」
「お前・・っ!」
「私は言ったわ。『正義は立場が変わったら正義ではない』と」
空気が変化し九郎を見つめるその視線。
それは間違いなく戦場で見た姫軍師そのもの。
「平家も源氏も今は関係ないわ。この場をどう逃げ切るかを考えなければいけない」
違う?と逆に訊ねられ返事を返せない。
「・・・奥州・・藤原・・・・・御館に要請をしてます」
「弁慶?」
微かな沈黙の後、弁慶からでた言葉に九郎は
不思議そうに声をかけた。
「彰子さんが我々の時に現れたときから、僕達のところに
監視がついてました」
「な・・っ!」
「調べていたのは、僕達・・・神子の行動でしょう?それと・・」
「彼女は、『怨霊を動かすもの』」
弁慶の言葉をつなぐように発したのは咲弥。
「お前と怨霊を操る女の関係は?」
「無いわ」
「おい」
「わからないのよ。どうして彼女が彼のことを知っているのかも」
どうしてなのかわからない。と首を横に振り考え込んだ。
その姿をじっと銀が見つめていることも知らずに・・・。