ステファンは精霊に満たされ、天を見つめ、神の栄光と神の右に立っている
イエスとを見て、「『天が飛来で、人の子が神の右に立っておられるのが見える』」と言った
旧約聖書 『使徒言行録』 7章55-56節より
好きな人を守れないなら
この身など存在する価値などない ―――――
「よほど大切のようね」
ほほほ・・・。と口元を手で隠し笑う政子に
咲弥は視線を向けたまま立っている。
「わたくしが、すぐに会わせてあげます。待ってなさい」
「それは無理ね」
「わたくしに出来ないことはないのよ」
きっぱりと告げた咲弥に、穏やかな顔で返事を返し
その場から消えた政子を見て、頼朝は咲弥を見る。
「・・・・・九郎たちを庇う理由はなんだ?」
「それを話す理由はない」
「なるほど」
咲弥の言葉が気に入ったのか目を細め笑みを零す
頼朝の姿が異様に映った。
「咲弥」
「知盛?」
すっ・・・と咲弥と頼朝の間に入ってきた知盛。
声をかけると、すらりと刀を抜き景時や彰子、そして頼朝をみながら
いつもと同じ調子で話し始める。
「・・・・・・ここは・・・・・・俺が務めてやろう・・・」
「知盛」
「くっ・・・・そんな顔をするな・・・・・お前の瞳・・・・・俺は気に入っているから」
彼の瞳の奥にある光に咲弥は、一瞬だけ視線をそらし
顔を上げると優しく抱きしめた。
「いいの」
「かまわないさ・・・・・・これも・・・・俺が選んだ道だ・・・・」
「わかった」
そういった瞬間、咲弥の姿は消え残ったのは知盛だけ。
「さあ・・・・・・・楽しませてくれるのだろう?」