今までのままでは何も変わらない
私にあの人は優しく告げてくれた。
だから、私・・・・・
「はぁ・・・・」
あの出来事から数日。
香織は銀の家から足が遠のいていた。
「香織さん!」
あの日逃げるように家を飛び出した私を銀さんは呼んでいたけど
それでも足を止めることなんてできなくて・・・。
「・・・何してるんだろう・・」
私と銀さんの間には何もない。
ただの仲のいい隣人。
それだけ。
(そうよ・・・それだけ・・)
考えると胸がツキンと痛む。
思い出すのは、昨日会ったあの女性・・・。
桎梏の髪と整った顔立ち。
瞳も髪と同じ黒曜石の瞳をもって
私を見つめ微笑んでいた姿は、女の私でも目を奪われるほど美しくて。
「あの人が・・・・・銀さんの・・好きな人・・」
勝ち目などない。
あんなに素敵な人。
私にはない雰囲気を持つ人。
「綺麗な人だったな・・・」
「あら?こんにちは」
背後から聞えた声。
思わず振り返ると昨日会ったあの女性と
私が村を案内した弁慶さんが笑みをたたえながら私を見つめている。
「こ、こんにちは」
まさか考えていた人が目の前に現れるとは夢にも追わなくて
声が裏返ってしまった。
「初めまして、平咲弥と言います。夕べはお話もできずに」
「い、いえ・・」
困惑している私をよそに、咲弥さんはじっと私を見つめ
「・・・・香織さんが銀の想い人かしら?」
と、ニコニコと笑顔を見せながら訊ねた。
慌てて首を横に振るが
それは効果がなかったようで。
口元に手を当てくすくすと笑われてしまった。
「あなたが彼の傍にいることが彼を本当の彼にしてくれる」
咲弥さんは私に微笑みそっと手をとった。
「でも・・・銀さんは・・」
あなたが好きなんですよ。と言葉を紡ぐことはできなかった。
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あとがき
うわぁー。めちゃくちゃ久しぶりの更新です( ゚ ▽ ゚ ;)
こちらも残りわずかのお話で完結なのに、ここまで伸ばしていたなんて。。。
駄目な女だ(;´▽`A``
こちらも今年で仕上げますね。