第四章 第拾五話 何度この手を汚しても(15) | As lagrimas que a lua derramou~月が零した涙

As lagrimas que a lua derramou~月が零した涙

版権作品にオリジナル人物を入れての二次創作小説を載せてます。
『遙か』シリーズが中心です

「―――駄目だったようですね」


「そうね」


少し離れた場所で、八葉と咲弥の様子を眺めながら隣ですでに朽ち果てている死体に視線を落とした。


「たいした事なかったようです・・・」


「仕方ない、これは最初の布石。ここには用はない、引き上げる」


「かしこました」


ひらりと身を翻し、来た道を戻る女を男は頭を下げ見送り、再び咲弥たちへ視線を向けた。


「・・・・俺は・・・」


「翔・・・何をしているの・・」


「今行きます」


じっと咲弥を見つめていたが、背後から聞こえた女の声に返事を返し女のところへ向かった。


「何を考えているの?翔?」


「いいえ・・・。気をつけてください。あなたに何かあれば」


女に『翔』と呼ばれた男は女の手をとりそっと口付けた。


「翔が守ってくれるのでしょう?」


「もちろんです。我が君」


「ふふ・・・・・。あなたは私だけを見ていて。私だけを愛して」


顔を上げた翔に、女は優しく口付け笑顔を見せた。











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「咲弥」


「将臣も気がついた?」


「俺が気がついたから、おそらくあいつも気がついただろうけど」


そう言うと、将臣はクィとあごで先を指差す。

少し先を歩いている弁慶が、景時に何か耳打ちをし、その言葉に景時も頷いて了承の意思を示している。


「熊野はやばいって?」


「どうだろうね。私にはまだわからない・・・。だけど・・」


「だけど」


「少し気になることもあるのよね」


それだけ言うと、咲弥は口を噤み何かを考えるように前を向いて歩き始める。


「おい、咲弥・・」


「後で話すわ。それまでは、あなたは神子の幼馴染で八葉。私は何も知らないあなたの友人の顔で」


「・・・・・りょーかい」


「咲弥さーん、将臣くーん!早く早くっ!」


手を振って笑顔で声を掛ける望美の姿に、柔らかな笑顔を見せる将臣に咲弥はくすりと笑みを落とす。


「なんだよ」


「ううん。なんでもない」


いつもクールな将臣とは思えない表情。

だけど・・・。


空を見上げる。







「どこの道に行こうというの」






その言葉は一つの道を示していた。