私は子供だから・・。
だから、彼の本当の優しさに気がついていなくて
彼が願っていたことに気がつかなくて。
「真実はいつも傍にある」
告げられた言葉の意味が分からなくて
どうしようもなく苦しくて、悲しくて。
膝を抱えて待っていた時間が私には苦痛すぎた。
貴方が言った本当の意味も理解できないまま私は貴方の手を離したの。
「どうしたの?」
振り返る私を見て心配そうな表情を浮かべて見つめる姉さんに
小さく首を振りながら笑みを落とした。
「私は、子供だなぁ・・って思ったの」
「珠洲・・・」
「本当に、子供だって」
赤く染めた空を見上げ想いを馳せるのはあの人のこと。
私だけが悲しいって思った。
私だけが好きなんだって思っていた。
それは違うのに
「わたし」だけ
どうして思ったのだろう。
彼の本心も気がつかないで
どうしてここに居るのだろう。
「愛している」
最後に触れる貴方の頬は冷たく、微笑みは誰よりも美しかった。
目を閉じ、光の粒となって消えた貴方は
私に貴方の心を与えてくれた。
「克彦さん・・・・。私も」
だからあの時告げられなかった言葉を貴方に届くように
この言葉を送ります。
愛してます。
ずっと――――。
貴方にもらった大切な心と命を持ちながら
貴方を永遠に・・・・。
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あとがき
久しぶりに、短編を書いてみました。
克彦さんがいなくなったという設定で・・・。