真っ白の世界は存在しない。
叩き落された現実に向き合うとき私は始めて人となる。
綺麗な心なんて持ってなどいない。
私はずっと欺いていたから。
自分の心と向き合っていなかったから。
暗い夜の道を一人歩く。
微かに道を照らしていた月明かりすら今は無くて。
それでも珠洲は歩くことをやめなかった。
「行かなければいけないから」
ずっと部屋に閉じこもって、ベットにもぐり
誰にも会わず。
誰の声も聞かず。
ずっと ずっと一人の世界に落ちていたから。
「僕が守ってあげるよ」
心を深く閉じ込めた世界に聞こえたあの人の声。
悲痛な声が、私の耳に届いた。
あの人が泣いているの
あの人が苦しんでいるの
濡れた顔を上げると、そっと包まれた感覚を体中が感じて
あの時からずっとこの世界に閉じこもっていた私をあの人は救い上げた。
いつもそうなの
あの人の瞳が あの人の腕が あの人の声が
私を私でいさせてくれる。
「逃げないから」
私は選ぶから。
「向き合うから」
もう振り向かない。
立ち止まり目の前の扉に手をかけるとゆっくりとその扉を開いた。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
あとがき
は~~い。ご対面ですよ~~。
最終話に行きましょう。