「――――ちょっと、ここに来る途中、妖怪の死体と大量に出くわしたんだが・・・?」
「ああ、それはきっと六道(りくどう)様だわ」
悟浄の質問に娘は嬉しそうに、その名を告げた。
「六道?」
「誰ソレ」
「お客さん達は、東からいらしたから御存知ないでしょうけど」
娘は六道について話し始めた
最近この近くで『救世主』と呼ばれている坊主のこと。
妖怪退治をする為
各地を転々としていて、身体中に札が貼られている大男のこと
その者の呪符にかかれば、いかなる妖怪も滅するという。
凄まじい法力をもった方
おかげで、この村もだいぶ救われていると嬉しそうに娘は告げる。
「札・・・・そういえばさっき見た妖怪達の死体にも札が―――」
(あの札には見覚えがあった・・・あの男が―――
いやまさか・・・それに・・)
三蔵は寝ている咲弥を見つめる
咲弥は、一瞬何かを見たような気がした。
彼女は神子だ
神子は何かしら感じることもある。
何を感じ何を見たのか、寝ているため聞くことも出来ない。
(俺は、コイツに何を求めている)
自分の考えに嫌気が差し、思わず顔を背ける。
「へえ?住み込みで働いてんだ?部屋ドコ?教えてよ」
「えー?どうしようかな―――」
「外も雨だし、俺達も濡れようぜ?」
「おい、セクハラ河童」
スパーン!!
「何だよッ!俺が何しようと関係ないだろッ!」
「この前の紅孩児の一件から
個人行動はひかえろと言ったばっかりだろうが!!」
ハリセンで頭を強く打たれ、悟浄は三蔵に突っかかり
三蔵は怒りを露にしながら叫ぶ。
お茶が冷めますよ、と八戒は二人に言うがその言葉は届いていない。
「紅孩児ッあいつ、今度いつ来るのかなぁ?」
「ダチか、お前ら」
嬉しそうに紅孩児のことを尋ねる悟空の言葉に
悟浄はあきれた顔を見せる。
「とにかく・・・・雨があがるまでは
ここで休むとことにしましょう
咲弥のこともありますから」
「ああ・・・・そうだな」
ぼんやりと雨が降りしきる外を眺めながら
三蔵は八戒の申し出に答えた
思い出すのは、十年前のあの時・・・・