遙か 遠い未来に
強く 解き放ち
生きて 母なる大地
生きて この胸の中
「何から話したらいい?」
宿屋へ入り、四人は咲弥を中心に囲んで彼女を見ている
出会ったときから不思議な女性だった。
けれど、今日あった紅孩児は彼女を見た瞬間に告げた言葉
それは八百鼡も同じだった。
彼女の言った言葉に過敏に反応を示したから・・・。
「【神子】・・・・貴方はそう呼ばれてましたね
それは、どういう意味ですか?」
「・・・神子だと?」
八戒が咲弥にたずねた言葉に三蔵がピクリと反応を示す。
「なんだよ、三蔵は知ってんのか?」
「・・・・神子とは、四方を司る四つの神を操るといわれている人物だ
おまえ・・・・・黄龍の神子なのか?」
「三蔵法師の名前は伊達じゃないね
そうよ、私は四つの神を操りし神子」
「なぁ~二人で解った言い方をしないで、俺たちにも解るように
教えてくれよ~」
頬を膨らます悟空を見て、頭を撫でると
咲弥は、話し始めた。
~黄龍の神子~
三蔵法師が用いる天地開元の経文と同じく
その力もまたこの地が創造し居たときに用いられた力
四方にはそれぞれ祭られている神
東の青龍・西の白虎・南の朱雀・北の玄武がある
その中心の長となりうるのが黄龍と定められる
黄龍には器が存在し
その器でなければ、この力を操ることはできない
だが、その力が光臨するときは
この地が異変に見廻れるときに当たる
神子と呼ばれるものは、その黄龍の力を受け継ぐ唯一人の人
「私も、はじめはわからなかったの
だけど・・・ここへ来て
貴方達に出会って解った
ここは、異変が起きているのだろうと」
「俺たちが何故、それに関わっていると?」
「神子には先見の力が備わっているから・・・」
「・・・・だから、事前にわかったということですか?」
八戒の答えに頷く。
「じゃあ、咲弥は・・・・みこ・・・・ってこと?」
「うん。黄龍の器を持つからね」
「お前、わかってネェだろ?」
「うるさいな!そういう悟浄はどうなんだよ!」
「すぐに理解は難しいから、これからわかってくれればいいよ」
優しく頭を撫でる咲弥に悟空は頷いて答える。
「・・・・・・だから、風が使えるって?」
「さっきの力は」
「風は白虎の力ね」
「あれは、契約しているからそれに白虎が力を貸してくれたの
おそらく、紅孩児は見てたんでしょう?
さっきの八百鼡さんと私の戦い」
合点がいったのか、三蔵は煙草を取り出し
加え紫煙を吐く。
「神子なら、なおさら天界で保護じゃねェのか?」
「観世音菩薩がいってたでしょ?
一緒にって。元々守られているだけの神子じゃないから」
「・・・・・・」
「三蔵?」
「とにかく、お前が神子で、力が使えるなら問題ない」
話は終わりだといわんばかりの言い方の三蔵
そのまま立ち上がると
さっさと自分の部屋に戻っていく。
「じゃあ、これからもよろしくお願いしますね咲弥」
「あれは、やっぱりこれからも旅は一緒にできるってこと
なんだよね?」
「そうですよ。ちょっと解りにくいかもしれませんけど」
苦笑しながら答える八戒に咲弥は
出て行った三蔵を思い出す。
「でも、三蔵らしいから好きよ」
「おや?三蔵が好きなですか?」
「もちろん。八戒も好きよ」
すぐに八戒のところへ向くと微笑みながら答える。
「俺は!」
「悟空も大好きよ・・・。悟浄、貴方も」
「サンキューな」
咲弥の言葉に誰もが嬉しそうな顔を見せた
しばらく、他愛のない会話をしていたが
やがて皆部屋へと戻っていき咲弥は与えられた部屋に一人
窓の外を眺めていた。
「ねえ・・・・・大好きな人たちができたの
貴方はなんていうかしら
『いけない人』っていうかしら」
窓の外には満天の星空が広がっていた。
「貴方の居ないこの世界、寂しいけど
彼らのおかげで私・・・すごく愛おしく感じている」
切なく悲しげにつぶやかれた言の葉は
誰にも聞かれることなく空気に溶けた。