「どう思います?姫軍師」
熊野から戻ってきてすぐに聞かされた戦の報告。
福原へ攻め入る源氏の動向。
「情報が足りない。もう少し欲しいわ」
「御意」
頭を下げると経正は、腰を上げ部屋から出て行く。
残ったのは将臣と咲弥。
「将臣はどう思う?」
「源氏の動きにしては、今までとは違うからな」
腕を組み、部屋に広げられている地図を見つめ答える。
「動いたか・・・・。熊野が」
「まさか・・・。熊野は【どこにも組しないと】」
「【熊野】は、でしょ?水軍が動かなくとも、別当が動いたのかも知れないわね」
「熊野別当が・・・。マジかよ・・」
「一人ならば、【熊野】ではないわ」
咲弥は、じっと地図を見つめたまま返し、外套と深々とかぶると立ち上がる。
「どこへ行く」
「時間は、あまりなさそうね。まずは本陣へ。そこで一手を考えるわ」
「それでどうかしら?」と笑い返事を求める咲弥に
将臣は面白いといわんばかりに立ち上がると声を上げる。
「おい!出るぞ!支度を急げ!」
平家、源氏。
双方の運命が始まる合図でもある。