「飛(フェイ)さん!やめとくれよ!
店がボロボロになっちまうっ」
八百鼡が咲弥に口を開きかけたとき
店の店主が酔っ払った男を止めに入っていた。
「勝負つけたきゃ、いつものヤツにすればいいじゃないか!な?」
「いつもの勝負ぅ?」
なんだそりゃ?」
喧嘩していた悟浄が殴るのをやめ店主に尋ねる。
「フン、酒場の男の勝負といやあ、決まってんじゃねーか
飲み比べよ」
ドンッとテーブルの上に酒をおくと
自信ありげに酔っ払った男は悟浄に告げる
しかし、三蔵も悟浄も悟空も
露骨に見せた顔は・・・・。
「・・・・お前ら今、あからさまにイヤな顔しなかったか?」
「いや・・・なんとなく」
「ま、最初っから勝負にゃなんねェか
そっちにいるのはガキと
見るからに貧弱な坊主だもんなあ」
男は咲弥の肩に手をおいて近づき
「姉ちゃん、こいつらが負けたら
俺たちの相手をしろよ・・・
もちろん酒の相手じゃネェよ。夜のな」
咲弥の腕を捕まえ、頭から足のつま先までなめるように見つめる
その視線。
「・・・・・店主」
酷く低い声が店の中に響き、一瞬その場が静まり返る。
今まで黙って聞いていた三蔵は懐から一枚のカードを差し出し店主へ見せる。
「・・・・この店中の酒。一滴残らず持って来い」
「は・・・ハイッ!!」
怒りに満ちている三蔵に酔っ払った男の手を払い
咲弥を引き寄せた八戒は苦笑を浮かべる。
「・・・・飲む前から、目が座ってますけど~?」
「ぜってぇ負けねェ~。咲弥は渡せねえからな!」
「それは、こっちも同じだっての」
「うん。期待してる・・・・・。よろしくお願いします」
やる気みなぎる二人の言葉に咲弥は
にっこりと笑顔で応援を始める。
かくして、飲み比べ大会が始まったのである。
(なんか、変なことになってきちゃった・・・・)
八百鼡は引き攣りながらことを見守ることにした。