記憶の奥で(7) | As lagrimas que a lua derramou~月が零した涙

As lagrimas que a lua derramou~月が零した涙

版権作品にオリジナル人物を入れての二次創作小説を載せてます。
『遙か』シリーズが中心です

記憶がなくとも 求めるのはあの人の瞳。腕。


けれど、今はあの人を求めることも許されないの?













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「で?」


「なに?」


昼食の時間。いつもと同じメンバーで図書室へ集まり

食事を開始した瞬間、晶が私に声をかける。

晶の言いたい意味が始めは飲み込むことができずに

思わず間抜けな問いかけを返しながら、他のみんなの顔を見た瞬間

それはすぐに何なのか理解した。

いつも昼食時間。いつものメンバー。

けれど、違ったのは。


「兄ちゃんは、一人で食べるって」


小太郎君の言葉を思い出して

少しだけ隣の空間を見つめる。

いつもは私の隣に居て、私や他のみんなのおしゃべりを聞きながら

黙々と食事をしている克彦さんの姿はここにはない。


「・・・・まだ。思い出さないのかな?」


「う・・ん・・・。」


ぎこちなくうなずく小太郎君に、亮司さんも肩をすくめ

苦笑しながら私を見ている。


「仕方ないわ。周りがあせっても仕方がないから」


私の言葉に、みんな頷くだけ。

あせっても仕方がない。

みんなに言っているようで、自分に言い聞かせたのかもしれない。


「少し、出るね」


「あ!姉さん!」


この場に居るの事が少しつらくて

思わず席を立ち、陸の呼びかけにも返事を返さず

逃げるように図書室をでた。










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「なに・・・・やっているんだろう」


逃げるように、裏庭の木陰にぽつんと座ると

じわっ・・と涙があふれる。

こぼれないように、必死で唇をかみ締めるけれど

あふれてくる涙を止めることは叶わなくて

肩が振るえ、かみ締めた唇から嗚咽が漏れる。


「ふっ・・・・く・・」


泣いても克彦さんが来るはずもない。

いつもそばに居ると思った。

あの戦いの後、心通わせてからはずっと。

どんなときも私のそばに居て、私を厳しくも優しく導いてくれたあの人が今は居ないのだ。


「なん・・・で・・・」


どんなに、どんなに考えても彼が記憶を失った原因が見つかるはずもなくて

自分の無力さをイヤというほど見せ付けられているようで

苦しくて。そして悲しかった。


























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あとがき

珠洲ちゃんが泣いちゃった・・・。ごめんね・・。