「あんな・・・豊葦原の姫なんて」
その言葉にずきりと心が痛む。
~龍の声、聞こえないんでしょう?~
幼い頃、言われ続けた言葉。
分かっていたから、私は何も出来ない子。
戦だけ。
巫(かんなぎ)と呼ばれていても、神の声が聞こえる神子ではないのだから。
「どうしました?」
「・・・なんでもないわ」
幼い頃から私を護ってくれる風早の声に緩く首を振り
笑顔を見せた。
そんな私に、風早は何も言わずに黙って頭を撫でてくれた。
きっと分かっていると思う。
ほんの些細なことでも、見つけてくれる風早だから。
私の思っていることも。
(でも、私は)
窓の外を眺める。
黒い禍の太陽を滅ぼすための〔妻〕という地位。
それは理解しているの。
皇族としての勤め。
国と民を護るために選ぶ最良の道だと。
けれど心が追いつかないから。
揺るぎない瞳を持つ彼は、悩んでいる私に変らない表情で見つめる。
でも、瞳の奥は少し失望の色も見え隠れしていたことに気がついたのは何時だろう。
(貴方と対等でいたいの・・・)
けれど、ここでは違う。
私はただのお飾り。
彼の歩む道の駒でしかないのかもしれない。
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あとがき
アシュヴィンが出てきませんが。許してください。
勢いで書いたので・・・。