記憶の奥で(3) | As lagrimas que a lua derramou~月が零した涙

As lagrimas que a lua derramou~月が零した涙

版権作品にオリジナル人物を入れての二次創作小説を載せてます。
『遙か』シリーズが中心です

どうして、私に降りかからなかったの?

どうして、彼がこんなことになったの?

どうして?どうして?

その言葉だけが頭を過ぎってそれ以上考えることが出来なかった。


小太郎君の案内で、家に到着し克彦さんがいる部屋へ案内してもらうと

ベッドで眠っている克彦さんの姿が目に飛び込んできた。


「・・・・克彦さん・・」


「今朝起きたら、庭で倒れていたんだ。それも酷い怪我を負って。

 一応手当てをしたんだけど・・・。

 ずっと目を開けなくて」


それで、私達を呼びに来た。と小太郎君は弱々しい声で私と陸に告げた。

克彦さんの頬に触れると温かい感触はあるものの、頬や腕は真新しい傷があって

胸が痛んだ。


「帰ってきたとき、克彦さんの様子は?」


「いつもと同じだった。壬生の村に用があるから、先に寝ていろって」


「・・・壬生の?」


「ああ・・・俺達は、特に兄貴は壬生の長男だから、やっぱり何かあると兄貴を頼ってきていたから」


小太郎君の話だと、克彦さんは壬生の村の人たちに何か頼まれごとがあって

それを済ませるために何らかのアクシデントが起きて怪我を負った。

そんなニュアンスだけど、肝心の〔何か〕というのが分からなかった。


ピンポーン

ピンポーン


「重森先輩や、天野さんが来たのかな?」


突然響いたインターホンの音に陸が立ち上がり玄関へと足を向けた。

私は、汗をにじませ時折苦しそうな表情を浮かべる克彦さんの顔を

タオルで拭いてあげる。

下唇をかみ締め、何でこんなことになったのか。それだけしか思い浮かばなくて。





「だから!克彦に会わせなさい!」




玄関口から聞こえてきた大きな声に、私も小太郎君も何事かと顔を見合わせた瞬間

勢いよく部屋の扉が開かれた。

艶やかな黒髪をなびかせ、綺麗な女性が立ってこちらを見る。

私達を見ているというか、寝ている克彦さんを見ているのが正しい。

隣にいる私を押しのけて、その人は克彦さんの隣に寄り添う。

その二人がまるで一枚の絵画のように見えて、ちくりと胸が痛む。




「絢乃ね~ちゃん」


ぽつりと小太郎君がその人を呼んだ。









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あとがき

はい、嘘つきました。克彦さんまだ目が覚めてません。