「ねえ?悟浄・・・私は、貴方のその深紅の瞳も髪の色も好きよ
貴方の過去が何であれ、私は誰にでも胸を張っていえるよ」
もう限界だった。
近かった距離を一気に詰めきつく自分の胸に引き寄せた。
誰でもない、彼女の言の葉に救われる
三蔵たちと同じように自分という存在のまま受け入れる
彼女の存在が全てを鮮やかにする。
まだ、全部を受け入れたわけではない
けれど、心強かった。
「サンキュな・・・・」
「どういたしまして。さあ、帰ろう?」
「ああ・・・・今夜は俺と一緒に眠る?」
「「調子にのんじゃネェよ(のらないでください)」」
「あら~」
底から冷えるような声に
悟浄はゆっくりと首を動かす。
「三蔵?八戒も・・・」
悟浄が動くよりも先に、咲弥が声を発した人物に声を掛ける。
「咲弥!」
「悟空?」
不思議に名前を呼んだ咲弥を抱きついている格好になっている
二人を見つけると、べりっと音が鳴るほどの勢いで
距離をとらせる。
「何にもされてねェか!咲弥」
「・・・どういう意味だ?」
「日ごろの行いの所為でしょうか?」
「お前までいうか・・・・・・」
悟空の言葉に八戒がこれまた棘の在る物のいい回しで
咲弥に近づこうとした悟浄と離す。
「よくわからないけど。何も無いから」
「本当か?」
「もちろん。誓ってね」
「・・・・行くぞ」
煙草の煙を吐き出し家へ戻り始めた三蔵に
咲弥はくすりと笑いを零す。
「どうしました?」
「なんでもありません。私・・・ここが好きです
本当に・・・ここにいられて幸せ」
三蔵を追い越し、立ち止まっている四人に
振り向きながら笑顔でつげ
家へ掛けていく
さらりと彼女の髪がゆれ去っていく姿に
全員があっけに取られた。
「・・・・チッ、勝手なこと言いやがる」
「そうですか?僕は嬉しかったですよ
彼女にあんなふうに告げられたことは」
「俺も、俺も!」
いつもと変らずの会話で去っていく三人に
悟浄は口角を上げポケットに入れている
煙草を取り出し、火をつけ吸い込み吐き出した。
「ガラじゃねェってか・・・」
ゆらりと白い煙が空気に溶けていった