神を敬うもの(15) | As lagrimas que a lua derramou~月が零した涙

As lagrimas que a lua derramou~月が零した涙

版権作品にオリジナル人物を入れての二次創作小説を載せてます。
『遙か』シリーズが中心です

白い服がふわりと舞い降りる
その予想外のものに一瞬動きを止めた瞬間
刀に変った手を素手で押さえ込まれ
そのまま床に叩きつけられる
突然の出来事に妖怪はすごい体制で倒れているが解る。


「倒れ方が不様だ。40点減点」


「三蔵!」


「計80点の減点ですね」


「僧正様たちのお話は?丁重にお断りしたの?」


「・・・・・・さあな」


「貴方らしいよ。本当に・・・・」


「ったく、なんでお前ってオイシイところ、一人占めするワケ!?
こんな奴俺一人でも余裕だったのによォ」


三蔵の肩に手を掛けた悟浄が嫌味ったらしく尋ねる。
悟浄の手を払い、つかつかと倒れこんでいる妖怪へ足を向け
顔をゆがめている妖怪にさらに顔を足で上げさせ
自分のほうへ向けさせる。


「お前ごときの刺客をよこす様じゃ、俺達はよほど見くびられているらしいな
貴様らの君主〔紅孩児〕とやらに」


三蔵の言い回しに咲弥は顔をしかめながら三蔵のやり取りを見ている
それに驚いたのは他の三人だ
彼女がここまで顔をしたことは無い。
一体彼女は何に対してそんな顔を見せているのかすら解らない。


「牛魔王蘇生実験の目的はなんだ?その裏にないがある」


「へっ!あんた血生臭ェな・・・・・・・今まで何人の血を浴びてきた?
『三蔵』の名が聞いてあきれるぜ」


「・・・・三蔵・・・」


「咲弥?」


一瞬で咲弥の空気が変る
悟空は名を呼ぶが咲弥には届いていないようだ。


「20点減点・・・・ゲームオーバーだ」


「言われなくても、死んでやるよ」


「三蔵!」


「三蔵!よけて!」


咲弥と八戒の声が重なる


「風よ!大気の壁を作り、かのものをいかなる邪気からも守れ!」


放たれた風が三蔵を包むと同時に鈍い音と轟音が響く。


「何、もしかして自爆したってヤツ!?」


「・・・マジで?」


しばらくして三蔵を取り囲む風が収まり三蔵の姿が映し出される。


「三蔵!大丈夫か!」


「ああ・・・心配ない」


(風が・・・・俺を爆風から守った?)


「三蔵・・・平気?」


「・・・・・お前か?お前一体・・・」


「そのことももう少し待って・・・約束するから」


「また、約束か」


舌打ちして汚れた法衣をはたきながら見つめる。


「口を割る前に自爆を選んだか・・・下級の妖怪にさえここまでの忠誠心
紅孩児とは一体・・・」


「いずれ会う」


「・・・・咲弥・・・」


「会ってみたら解る・・・・その人物がどんな人なのか・・・」


「なあ、咲弥チャン、もしかして・・・ソイツのこと知っている?」


「知らないよ」


即答の返事に拍子抜けする


「あったこと無い人だけど、興味はあるでしょう?」


それだけ悟浄につげると葉のところにいる八戒の場所へ向かっていく。


「うちらのお嬢様は、一筋縄ではいかないって?」


「何故俺に振る?」


「べっつに~」


部屋の隅にいつの間にか移動していた葉
八戒と咲弥が近寄り言葉をかける
しかし、安堵の顔と少し戸惑いの表情が浮かんでいた。


「あなた達は・・・・・何者なんですか!?」


恐怖と何かしらの思いのまま告げる言葉は
この場にいた全ての者の動きを止めるには十分すぎる。


「今までにも沢山の血を浴びた・・・・って!
こんな風に殺生を続けてきたのですか!!」


三蔵を見る目が尊敬から失望へ
それに相応しい瞳の色


「葉くん」


「咲弥さま・・・・貴方は・・・・・こんな人たちと・・・」


「それ以上言うと貴方に失望するわよ」


射抜く瞳に今度は葉が動きを止める。


「貴方の物指しで三蔵を評価してもらっては困るわ
誰だってこんな行為好き好んで・・」


「良くないに決まってますよ!誰であろうと命を奪うという行為は、
御仏への冒涜です!」


「本心なの?コレだけの身内の死を目の当たりにしても
貴方はその御仏の行いを守るというの?
貴方は、仲間が殺されているときに何を願った?」


「あ・・・・」


『助けてください!菩薩様!誰か!!』


「そんなに『神』に近づきたかったら死んじまえ。死ねば誰だろうが『仏』になれるぞ
そこの坊主達みたいにな」


冷たいく言い放つ三蔵の言葉に咲弥は今度こそ
何もいえなくなった葉を見つめる。


「生きるのも死ぬのも自由ね
信仰を大切にするのも・・・でもねソレを盲目に信じ
人にその考えを押し付けるのもどうかしら?」


「・・・・でも、まあ残念なことに、俺達は生きているんだな。コレが」


悟浄は頭を掻きながら葉につげる
いつの間にか朝日が昇り始め寺院を明るく照らす。


「でも・・・・せめて・・・・死んだ後が安らかでありるように」


黙り座り込んだ葉に咲弥は朝日を受けながら立ち上がり


歌い始める


~その手を 私へと預けて
目を閉じて 
まぶたに口付けて
痛みを癒しましょう
眠りなさい ゆっくりと~


高く低く響き渡る歌声は射光を浴びる彼女を神々しく写した
初めて聞く葉はその姿を黙って見つめるだけ
あたり一面、光の玉が空へと昇っていく。


「・・・咲弥・・・」


悟空のつぶやきに誰も声を出すことができない
三蔵も悟浄も八戒も彼女が目の当たりにして言葉を出すことができない
彼女の歌声に誰もが声を出すことすら叶わず
歌を終えた彼女が声をかけても
しばらく誰も動くことができなかった。