時には非情に振舞う姿に納得が出来ない。
助けられる人も居るのに。
けれど、勝つためには仕方がないことなの?
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「先へ進みましょう」
周りに火を放たれ、助けてと叫んでいる兵士たちを他所に
告げた弁慶の言葉に、望美は納得が出来ない。
ほんの少し手を伸ばせば届きそうな距離にいる仲間の手を振り切り
先へ進まなければならない。
「でも!」
「多少の犠牲はやむえません」
「多少って・・・」
いつもとは違う瞳で告げられ、怒りが身体中に駆け巡る。
「見捨てるんですか?」
「・・・・」
「弁慶さん!」
望美の言葉に、腕を組みちらりと視線を向けた彼の瞳は
いつもとは違う冷ややかな瞳だった。
びくりと身体を動かす。
「僕達は遊びに来ているのではありません。
平家を倒さなければなりません。
今ここで仲間を助けていたら、僕達は全員死にます」
「でも!」
「・・・僕だって、救えるのなら救いたい。
でも今僕達がしなければいけないのは助けることではありません
先へ進むことです」
きっぱりと告げた弁慶に、ぐっと言葉を堪える。
弁慶の言いたい事だって分かる。
だけど・・・。
「はやく、進めば助かるかもしれない。そういうことですか?」
「・・・・・・・・そうですね」
「わかりました・・・。だけど、納得はしてません」
ぐっと剣の鞘を持ち望美は前を見据えて歩き始める。
あのときだってどんなにお願いしても弁慶さんは先へ進むように
自分を促した。
耳に残る悲痛な声を振り切るかのように望美は前を向いた。
大丈夫よ
「え・・・・。」
「先輩?」
「どうしたの?神子?」
「ううん・・・。なんでもない」
咲弥の声が聞こえたような気がした。
しかし彼女の姿がここにあるはずがない。
軽く首を振り歩き始めた。