将臣と再会し、そこで出会った咲弥。
最初には出会うことはなかった。
着実に運命は変りつつあることを望美は確信していた。
ここでの運命に気がつかずに・・・・・。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「じゃあ、咲弥さんは兄さんと一緒にこの世界へ?」
「どうかしら?その辺りは私にも」
譲の質問に苦笑をしながら答える。
「白龍、咲弥さんも一緒に連れてきたの?」
「ごめん、咲弥は、よくわからない。
でも違うような、違わないような、世界は
一つじゃないから」
「一つじゃない?」
「うん、狭間の間は、いくつもの、空間ある。
私は、その中で神子をさがした。
だから、神子をここへ連れてきた。
咲弥も狭間につれてこられた。引き寄せられた
よく、わからない」
しゅんとし、俯く白龍に咲弥は頭を撫でて抱き上げる。
いきなり抱き上げられ、目を白黒させて驚いて咲弥を見つめる。
「大丈夫、あなたの所為ではないのだから
そんなに落ち込まないで、ね」
「うん!ありがとう、咲弥」
ぎゅっと咲弥に抱きつく白龍を咲弥も同じように抱きしめ
ゆっくりと下ろす。
「まったく、お前は暢気だな」
「あら?あなたに言われたくはないわ。将臣」
肩をすくめて咲弥を見る将臣に
くすりと笑みを零して返事を返すと将臣は微妙な笑みを落とした。
「お二人とも、仲がいいですね」
「お互いに苦労した仲間ですからね」
二人の会話に入るかのように弁慶も声をかけてくる。
伺うようなその物言い。
(軍師とは因果なお仕事ね)
笑顔でこちらに訪ねてはいるものの
瞳は笑っていない。
物腰の柔らかな言い方相手を油断させて
そして肝心な情報は聞き逃さない。
それがこの世界の【武蔵坊弁慶】だ。
整った顔立ち、言葉巧みに女性を翻弄させる。
この世界では敵の情報を知るには重要なこと。
そのためには自分の持っているもの全てを利用してでも有利に持っていく。
「そういえば、貴方の名前を伺ってなかったですね。
私は、咲弥です」
「僕は弁慶といいます」
にこやかに名前を告げる咲弥に弁慶も同じように名を告げた。
(不思議な人だ)
弁慶は咲弥を見つめる。
そんな弁慶に咲弥は首をかしげてこちらを見つめている。
最初会ったとき、あの儚げな印象はもう見えない、
本当に唯の女性に見える。
けれど、何かを感じた。
軍師の自分が見つけた何か
それが何なのかは分からない。
けれど、目が離せないのも確かだ。
白龍の神子として光臨した少女
あの少女が張り詰めた空気を持っているのは知っていた。
しかし、それは何かを背負ったものに与えられた責務なのだ。
あの少女は、これからの軍に必要不可欠な存在。
その存在を平家に知られることなく、そしてそれを上手く利用するのが
軍師の使命。
その矢先出会った、もう一人の幼馴染。
幼馴染が連れている女性が言った一言
本当に一言が少女の心にあれだけ響いて
涙を流させた。
だからこそ、不思議な存在なのだ。
何も力のない女性
(けれどなにかある)
弁慶はにこやかに言葉を交わしながら感じていた。
これから もう一つの 運命が 動き出す