運命の花(5) | As lagrimas que a lua derramou~月が零した涙

As lagrimas que a lua derramou~月が零した涙

版権作品にオリジナル人物を入れての二次創作小説を載せてます。
『遙か』シリーズが中心です

微笑む彼は、どこか一線を引いているように思えて仕方なかった、

同時に心に痛みが走ったことに気がついた。


望美ちゃんが買い物へと出かけてしばらくしてから

扉が開き、そちらへ視線を向けると

彼が一瞬驚いた様子でこちらを見ていることに気がついた。


「おかえりなさい」


「・・・・望美さんは?」


視線をそらされ、訪ねられ答えると

そうですか。といって自分の部屋へ戻る彼の姿に

きゅっと唇をかみ締めた。

それは、ここへ来たことに対する戸惑いと

会えたことに対する嬉しさ。


「・・・・バカみたい・・・」


一人になり、ぽつりとつぶやく。

彼は会いたいと思ってなかったのかもしれない。

むしろ一緒になって一年。

まだまだ、二人で幸せな生活をしたかったのかもしれない。

それを望美ちゃんの行為に甘えて、リズの優しさに甘えて

ここに来てしまった。


「・・・でも、会いたかったの・・・。人目でも・・」


この気持ちは封印するから。

ずっと胸にしまうから。

望美ちゃんの悲しい顔も、弁慶のつらそうな顔も見たくないから。


「・・・今までだってできたのだから」


部屋の中に入り込む風の中に

彼の匂いを感じる。

廊下を歩く音が聞こえる。

目を閉じて、襖が開くと同時に弁慶に笑顔を見せる。


私の見せる笑顔に、あの時と変らない笑顔を私に見せて

彼は告げた。







「ようこそ、我が家へ」