白龍の神子こと春日望美は時空を超えて
この異世界【京】へ小さな男の子白龍に呼ばれ
遙か彼方時空の彼方へたどり着いた
初めは戸惑い、自分に起きたことすら分からなかった
しかし、次第に自分の置かれている立場が
なんとなく分かり、これからこの世界の為にと
思っていた矢先のことだった
八葉と呼ばれる者たち
そのもの達と一緒に怨霊を封印すべく
そしてこの世界を正しく導くため
決心をした瞬間
それは見事に打ち砕かれた
目の前に広がる炎
逃げ惑う人々
何が起きたのか分からない
分かることは、自分の世界ではありえない出来事
平家が源氏に勝つ姿
「源九朗義経の最後を知りたいのか?」
平家が継げた言葉が信じられなくなり
いつもいた場所へ向かう
そこにいたのは、泣き崩れている
もう一人の神子、黒龍の神子 梶原朔
駆け寄ってくる彼女の姿と涙で理解した
助けてくれた人はすでにこの世界にはいないのだと
「神子・・・生きて」
微笑む白龍の姿、言葉がその世界で望美が見た
最後だった
何が神子だ
何が稀有な存在だ
私は何一つ出来てない
私だけ助かってそれでいいの
そんなの
そんなの
「私は・・・・願う。みんなを救うために」
望美の言葉に呼応するかのように
白龍から手渡された小さな鱗が光だし
望美を包み込んだ
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望美が包み込まれ、再び京へたどり着いたとき
みんなの姿に嬉しく思った
みんなの笑顔が、存在がこんなにも嬉しいことはない
「これで、兄さんがいたら」
同じ世界からこの世界へ引き込まれてきた
有川譲の言葉に望美も小さく頷いた
「将臣くんはどこにいるんだろうね」
最初のときから将臣の姿はなかった
途中で出会うのだ
望美は一度この運命を進んでいる
けれど、他の人たちは覚えてないのだ
知っているのは自分のみ
「先輩?」
「なんでもないよ」
心配そうに声をかける譲に望美は
いつもと変らない笑顔を見せた
「すこしいいですか?」
「あ、はい。どうぞ」
柔らかな笑顔を見せて弁慶が
二人へ声をかける
二度目の運命だが、自分達が史実で知っている
武蔵坊弁慶とは風貌があまりにも違いすぎる
屈強な男と伝えられてた容姿とはあまりにも違いすぎる
柔らかな物腰、なにより、光に浴びてキラキラひかる
少し色素の薄い髪
整いすぎている顔立ち
目が合うだけで、頬が赤くなってしまう
「おや?どうしました?」
「いいえ、なんでもありません」
「そうですか?可愛らしい方に見つめられて
こちらは心を乱れてしまうのに・・」
さらりと告げる言葉に、さらに顔を赤くしてしまう
「お話とは?何でしょうか?」
話をそらしたくて、慌ててごまかす望美の姿に
弁慶はくすり、と笑い穏やかに話し始める
「これからのことですが・・・」
その言葉に、思考は直ぐに戻される
「私を一緒に連れて行ってください」
「先輩!」
話が一通り済んだ後、望美は弁慶に告げる
その言葉に譲は声を上げるが
望美は譲らない
あのときの運命にならないようにするためにここに来た
ならば・・・・
まっすぐに見つめ自分の意志を告げるの望美の姿に
一瞬弁慶も面を食らうが、それを表に出すことなく
すこし思案した様子をみせて、口を開く
「まずは、九朗に話をしなければなりませんね」
「はい」
運命を変えるの
絶対に
あんな悲しい思いをしたくないから
そのときの私にはその思いだけだった
将臣くんともう一人の人と会うのが
もう直ぐだってことこのときは知らなかった