「大丈夫ですか?飛鳥さま」
「もうすっかり元気ですから」
告げた飛鳥の顔を見て小鳥はぎこちなく頷くだけだった
飛鳥が目を覚ましたのは、澪たちが
この村を去ってから一日が過ぎてからだった
ここにいる事
玉依姫と守護者がいないという事に
飛鳥は取り乱すことなく平然としてた
長老達は、澪に暴言を吐いた小鳥に処分を
考えていたが、それは飛鳥がやめるように便宜を図っていた
「飛鳥さま~。おはようございます」
「おはよう」
あれから半年
いつもの日常
村の子供達は飛鳥に纏わりつき
遊ぼうとせがむ
子供達の無邪気な笑顔と行動に
飛鳥は少しずつ笑顔を取り戻していた
「ねえ~。飛鳥さま」
「なんだい」
「飛鳥さまは、小鳥さまと結婚するの?」
子供の無邪気な質問に
飛鳥は驚きのあまり言葉をなくす
それは、一緒にいた小鳥も同じだったようで
一瞬言葉をなくすが、直ぐに顔を真っ赤にして
逃げるようにその場からいなくなる
「小鳥さん!」
飛鳥の声が後ろから聞こえてきたが
小鳥は恥ずかしくて、そのまま走り去る
「なんで小鳥さま逃げたのかな~?」
「・・・どうしてだろうね」
首をかしげる子供に、飛鳥は苦笑しながら
走っていった小鳥の後姿を思い浮かべていた
*********
子供達と別れ、飛鳥はぼんやりと村を流れる小川に来ていた
ここは平和だ
人々の暖かな心が自分を癒してくれる
ふと自分の両手を見つめる
どんなに自分で願っていても
力が発動することなく
本当に守護者の任を解かれたのを実感する
「澪・・・・。俺は・・・・お前を」
「飛鳥さま、こんな所にいたのですね」
「小鳥さん」
息を切らせて自分のところへ駆け寄ってくる小鳥
慌てて走っている小鳥は、斜面から足を滑らせた
「きゃ!」
「小鳥さん!」
目をつぶっていた小鳥は
自分の身体に来るであろう衝撃を感じないことに
気がつき恐る恐る目を開けると
自分を抱きしめ庇っていた飛鳥の姿が目に写った
「飛鳥さま!」
「大丈夫?怪我はない?」
「は、はい・・・。私は大丈夫です」
小鳥を腕に抱きとめながら
飛鳥は、沈む夕日を見つめた
「飛鳥さま?」
「・・・・小鳥さん」
「はい」
いつになく真剣な顔で小鳥を見つめる
「俺と結婚してください」
「え・・」
さぁぁぁ・・・・
風が二人の間を駆け抜ける
「俺は、この村の人間じゃない。だけど貴方はいつも
俺の隣にいて俺を励ましてくれた
これからも俺の側に居てほしい」
「飛鳥さま」
告げられた言葉に
小鳥は嬉しさのあまり涙が溢れる
「泣かないで。小鳥」
「だって・・・夢みたいで」
「大切にする・・。小鳥」
そっと触れるだけの口付け
「こちらこそ・・宜しくお願いします。飛鳥さま」
夕陽が二人を包み込む
********
「壬生が結婚?」
「相手はあの神社の巫女【小鳥】」
「そうか」
飛鳥と小鳥の結婚は
すぐに守護者の耳にも入った
「これが、封印の鍵になるでしょうね」
「姫・・」
庭をぼんやりと見つめて告げた澪
どの守護者も言葉をつむぐのにためらう
「・・・姫の祝福を天津村からありますが
どうしますか?」
「厄介なことになるだろう?」
「ああ・・・あの子、姫を敵視しているだろうし」
「行きましょう」
「姫」
立ち上がると目を閉じくるりと守護者達を見る
「彼がいるのです、おそらく心配はないでしょう
彼女を留まらせているのも、彼の存在ですから」
「姫は、二人仲むつまじい姿を見ても平気ですか?」
「いじわるね。貴方が今は私の夫でしょうに。天野さん」
澪の言葉に天野は代わらない笑顔を見せるだけ
「問題ありません、全ては天津村を護るため
私は【玉依姫】なのですから」
「では、日時が決まり次第返事を書きます」
「お願いします」
歯車が回るまであと少し
否
このときすでに定めは決まっていたのかもしれない