「うっ・・・」
頭が痛い・・・
ずきずきする
目を開けると、そこは薄暗い
何処かの家のようだ
ぴちゃり、ぴちゃりと水が落ちる音が聞こえてくる
身体を動かそうとするが両手が壁に鎖につながれ
身動きが取れない
「・・・たいそうな歓迎だ」
軽くため息を吐き、とりあえずの状況を判断することにした
座敷牢のようだ
目の前に写る格子、ここは地下室か
窓もない。ぽっかりと口を開いた穴は階段が続いている
おそらくあそこだけが唯一の出口なのだろう
さわり・・・・・
ドコかからか、風が流れる
ふわりと感じるにおい
ああ・・・これは
「珠洲・・・」
あいつを抱きしめたときに、あいつのニオイが
俺についたのか
ふと、笑みを零す
今、あいつは何をしているだろうか?
泣いているだろうか?
それども怒っているだろうか?
「・・・まあ、どんな顔でもかまわないが」
〔何を考えているのです?〕
冷たい空気が入り込んだ瞬間
ここまでつれてきた女が俺の身体に絡みつき囁く
「お前じゃないことは確かだ」
〔つれないことを・・・。あんなにも愛し合った仲なのにお忘れか?〕
「ふん、覚えがないね」
〔・・・この場所をお忘れか?〕
女は身体をはなし俺の頬を撫でる
「知らないな」
〔貴方が私と会うために作られた場所です〕
「ここがか?」
くっ、と笑いがこみ上げてくる
〔どうしたのです?壬生様〕
「こんな牢獄をお前に与えたのか?ずいぶんな恋人だ
さぞかし、お前を毛嫌いしていたのだろう」
〔・・・・・・〕
「どうした?本当に愛しているならこんな場所など
俺は作らない」
〔・・・壬生様は本当に、お忘れになったのですか?〕
「くどいな。知らないね。それに、俺が今愛しているのは
アイツだけだ」
その言葉にかっと目を見開く
風が容赦なく俺を押さえつけ息が出来ない
〔壬生様・・・。愛しているとおっしゃって
あんなに激しく愛したわたしに、もう一度〕
「・・・何度も・・・同じこと・・言わせるな・・・よ
お前を・・あいしてなど・・いない」
〔壬生様!〕
さらに激しく風が吹き荒れ
息が出来なくなる
「うっ・・ぐぅぅ・・」
〔壬生様・・・・愛しています・・・ずっと永遠に私の側に〕
遠くなる意識の中、笑いながら話す女の声が
聞こえそのままくらい闇へ意識を引き込まれた